メタバースが「車のデザインを変える」は本当か 開発手法が変わって「より売れる」デザインに

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正確なテストをするためには、同質的な対象者群を確保する必要や仮想通貨による支払い、売価の調整(数百万円のアイテムを売ることはできない)などいくつか課題はあるが、わかりやすい結果が得られ、意思決定に活用しやすいだろう。

「メタバースならでは」の特徴を生かして

今からさかのぼること5年前、2017年の第45回「東京モーターショー」は、海外メーカーの出展が激減したことで話題となった。

参加したのはドイツ、フランス、そしてスウェーデンの3カ国のメーカーだけであった。さらに2年後の第46回東京モーターショーでは、メルセデス・ベンツ、ルノー、アルピナのたった3社となった。

2019年の東京モーターショーに出展したメルセデス・ベンツ(写真:Mercedes-Benz)

これは、メーカー各社が、これ以上の市場拡大が見込めない日本よりも、大幅な成長が見込まれる中国の自動車市場のほうを向いたためである。

「日本に出展するよりも中国に」という流れは、今後もそう簡単に変わらないだろう。コロナ禍もなかなか終わりが見えず、リアルで集客するのはこの先も簡単ではない。

一方で、メタバースにはポテンシャルがある。かつてのモーターショーでは、行列に並んだり人混みをかきわけるようにしたりしながら展示車に触れたものだが、コロナ禍を経験しているせいか、多くの人がベタベタ触ったものに並んでまで触りたくない気持ちも個人的には強い。メタバースなら、行列に並ぶこともなければ、他人が触れたことに気を使う必要もなくなる。

日産はすでにバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」を公開している(写真:日産自動車)

また、メタバースでは、ブランドフィロソフィーを伝えやすくなる可能性もある。メタバース内で新型車やコンセプトカーを発表しながら、同時にブランドの歴史やフィロソフィーを別ウィンドウで見せたり、音声で伝えたりすれば、ストーリーとともに商品情報を伝えられるからだ。

メタバースがまだ広く一般化していない黎明期においては、“メタバースならでは”というマーケティング手法はなかなか出てこないだろう。しばらくの間は、現在のリアル世界と同様に、メタバース内で広告権を取り合いながら、インフルエンサーマーケティングといった既存の手法が用いられるだろう。

その後、現時点では想像できない新たなマーケティング手法や意思決定に有益なデータが誕生するかもしれない。

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三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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