ミクシィがFC東京や英国パブ「HUB」と組んだ真意 「スポーツ観戦文化」を日本で広げられるか
実はこのファンスタで提携するのが、スポーツ中継配信の分野で独走する「DAZN(ダゾーン)」だ。日本では商業施設などで観戦を目的としてスポーツ試合の放映を行う場合、その興行主催者や放送事業者などに対してその都度申請をする必要がある。
一方、商用施設でDAZNを視聴する場合、商業利用契約することで、好きな試合を店内で放送することが可能になる。契約者になれば、DAZNの公認サービスとなっているファンスタ上で、放映予定などを告知することもできる。
「僕らがチャレンジしているのはITの力を駆使してもう一度集まるということ」。ミクシィでファンスタの事業責任者を務める中川敬介氏はそう強調する。同氏は前職時代、アメリカでの駐在経験があり、その際に日本とアメリカのスポーツ観戦文化の違いを実感したという。
アメリカでは、NFLなど人気スポーツのチケットが高騰する一方、テレビ中継は有料のケーブル放送が前提。そこでパブなどに集まり、同じチームを応援する者同士でスポーツ観戦するという文化が根付いた。「ファンスタを通じて、そういう文化を日本でも根付かせていきたい」(中川氏)。
アウェー戦でも収益機会を創出
このファンスタを仕掛けた別の狙いが、クラブチームの「アウェー戦におけるマネタイズ」だ。Jリーグでは自らが拠点とするホーム戦と、敵地で戦うアウェー戦がある。ホーム戦の場合、チケット収入やグッズ販売などでの収益機会が得られるが、アウェー戦ではそのような機会がほとんどない。
ミクシィが目を付けたのはまさにこのアウェー戦だった。例えば、冒頭のイベントはFC東京が広島に乗り込んでのアウェー戦だった。その際、FC東京の応援ドリンクを販売し、その売り上げの一部がクラブに還元される仕組みとなっている。
とはいえ、ミクシィの思いは、単に自ら運営するFC東京だけが潤えばいい、ということではない。上記の応援ドリンクのような施策はセレッソ大阪や浦和レッズ、川崎フロンターレといった他クラブでも行っており、FC東京と同じような機会創出を広げようとしている。
ここ数年のミクシィのスポーツ事業への投資の狙いが、徐々に見えつつある。スポーツ観戦の文化を広げていくと同時に、クラブチームの収益機会を増やすことができるか。それを実現していくうえでも、ファンスタの成否が持つ意味は決して小さくない。
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