孫23頭!30歳になったパンダ「永明」のすごい過去 日本パンダ史50年で初めて30歳を迎えた
エサが合わないのか、永明は突然、苦しそうに体を丸めて動かなくなり、頻繁に粘液便(腸の粘膜が剥がれ落ちて出る便)を排泄する。下痢もする。永明は2歳になり、成長期でどんどん体重が増える時期なのに、ほとんど増えない。
そこでアドベンチャーワールドは、中国や上野動物園の人に相談しながら、エサを少しずつ変え、竹を中心に与えるようにした。竹のほかは、ペレット(動物用ビスケット)やニンジンを与え、ミルクなどはほとんど与えないようにした。すると永明の体調が良くなっていき、1日のふんの量は2~5kgだったのが15~25kgに増えた。消化器系の疾患は減った。この状況になるまで6年ほどかかった。
「エサをうまく改善できなかったら、30歳になれたか分かりません。永明で学んだことは、ほかのパンダたちのエサにも応用しています。消化器系ではあまり不自由しなくなったのは、永明に教えてもらったことかなと思います」と中尾さんは振り返る。
子どもの頃の永明には、なんとか竹を食べさせようと良質の竹を与えたので、永明はおいしい竹を選ぶことを覚えた。そのため前述のように、竹の味にうるさいパンダに育った。
かつて永明を飼育した熊川智子さんは「チェーンソーとナタとノコギリとロープを持って竹藪に入り、竹をとっていました。永明のグルメ度に合わせて、いろいろな竹をとって来ても、匂いを嗅いでポイッと捨てるのです」と永明に手を焼いたエピソードを披露しつつも嬉しそう。結果的に永明は長寿となって、大家族を形成した。
竹が基本のエサ
上野動物園も1972年に北京動物園からカンカン(康康)とランラン(蘭蘭)が来たときは、竹のほかにミルク粥やパンなどを与えていた(参照:『パンダ来日の扉を開いた?ニクソン訪中から50年』)。
当時は北京動物園のやり方を参考にしており、その後、上野動物園で暮らしたパンダたちにも、果物や団子などの副食を中心に与えた。だが2011年2月に来園したリーリー(力力)とシンシン(真真)は、野生のパンダがいる四川省から来た。四川省の飼育施設にならい、この2頭のエサから、野生のパンダの食性に近い、竹を大半とする内容に変えた。
今や、世界のパンダ飼育も基本的にエサの大半が竹で、それ以外は、栄養補給やトレーニングのご褒美などで与える程度になっている。
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