親がまったく教えることがなくても「いつの間にか部屋の中を走り回っていた」というのが当たり前なのです。人間には本能として「走る」という運動能力がDNAに組み込まれています。二足歩行で立って走るという運動は、ロボットで再現するのも難しいかなり複雑な動きですが、乳幼児でも自然にできるのです。
一方、道具を使う運動、たとえば「自転車に乗る」は、必ず誰か(親など)の助け(道具を使いこなす知識やコツ)が必要になります。教わらなくてもいつのまにか走れるというDNAに組み込まれた運動プログラムは実に緻密で優秀です。
学童期は、子どもが小学校で運動会デビューする時期です。乳幼児期は本能としてただ楽しく走りまわっていたことが、生まれて初めて人と比較される能力のひとつになります。
昔から運動会の徒競走でヒーローになる「足が速い」男の子は不思議と女子の人気を集めます。思春期を迎える前の女子が本能的に察する異性への優劣評価なのかもしれません。一方の「足が遅い」男の子にとっては屈辱を味わうつらい時期です。運動嫌いのきっかけになることもあります。
全国各地で行われる「親子ラン」
この時期、お父さん(お母さん)と一緒に走る「親子ラン」という学童期の子どもが参加できる種目が全国各地のマラソン大会で行われています。小学校の体育では走らない1〜3キロという長い距離を親子で一緒に走るのです。
親子で一緒にやる運動として思い浮かぶのは、たとえば野球のキャッチボールやサッカーのパス練習でしょうか。日常の公園でよくみかける言葉をかわしながらボールをやりとりする光景は、親子の絆を深めるほほえましい時間だと思います。
一方の親子ランはどうでしょう。子どもにとって数キロというのは長く、決して楽ではないはずです。ほほえましいというより「厳しいことに親子で真剣にチャレンジする」というイメージでしょうか。
実際は少し違います。
同じフィニッシュに向かって親子で声をかけ合いながら走るという、ボールのやりとりにはない楽しさが親子ランにはあります。道具を使うスポーツのように大人が一方的に子どもに技術を教えるのではなく、親も懸命に走らなくてはならないので子どもからも励まされるのです。
親からの一方通行ではなく、お互いが支えあい応援しあえる親子ランは日常生活にはない体験です。そして、一緒にフィニッシュラインを越えたときの達成感は、ずっと記憶に残る思い出になります。
青年前期と青年後期は本格的なスポーツに出会う時期。しっかりスポーツに取り組んで日々のトレーニングを行っている青年前期・後期の子どもの体は、急激に成長し体力もピークを迎えます。陸上部でなくても人生で最も速いスピードで走ることができる年齢を迎えます。
反抗期で親への感謝が薄れ気持ちさえ離れることもありますが、体力の違いからもはや親は子どもと一緒に走れなくなります。
青年後期は自我が確立し自立した大人になるための最終段階です。親とは違う自分だけの世界と交友関係ができあがり、親子関係は徐々に遠のいていきます。そして高校を卒業し18歳になると、法的にも発育的にも完全な成人となり親から離れていくのです。
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