スタイルの違いは全10話の中で何度かタイムスリップが起こる点にも見ることができます。第1話と第2話は1つの時代、第3話、第4話、第5話は3~4年後、そして第6話以降で10年後が描かれます。時間軸が飛ぶことによって、視聴意欲が削がれやすくもありますが、毎話ごとに見せ場を作って期待を持たせるのは憎い演出です。
製作費は1話あたり約28億6000万円
期待が高まった初回はU-NEXTの海外ドラマの中で初週視聴ランキング第1位を記録しています。全米では1話の視聴者数が2000万人を超え、ストリーミング配信が展開されているアメリカとヨーロッパを合わせた視聴者数はHBO史上最多となりました。勢いに乗ってシーズン2の制作を発表し、肝心の視聴者数もさらに数字を伸ばした2週目の結果がアメリカのニールセンから発表されています。
その後はAmazonのプライム・ビデオからジャンルが被る「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」が配信開始され、世間ではひとまとまりで話題になってもいます。ライバル作品ながら互いに思わぬ相乗効果を得ているのではないでしょうか。
両作品の話題の1つにあるのが製作費です。Amazonのプライム・ビデオで640億円を超える超大作が登場しなければ、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」はファンタジードラマとして世界最大規模になっていたのかもしれません。1話あたり2000万ドル弱(28億6000万円)と言われています。
なお、前作の「ゲーム・オブ・スローンズ」は2019年に公開された最終シーズンが1話あたり約1500万ドル(21億5000万円)と推測されています。これに対して初めのシーズンは1話あたり600万ドル(8億6000万円)ほどだったので、前作と比べて初めから大盤振る舞いというわけです。
撮影はイギリス、スペイン、ポルトガルの3カ国で行われ、最大2000人のスタッフが参加したこともわかっています。スピンオフ作品として考えると相当な扱いです。エンターテインメント業界の歴史を塗り替え続けたシリーズとして、製作したHBOの高いプライドを感じます。
HBOにとって、攻め時のタイミングでもあります。9月13日に発表された最新の第74回エミー賞ではHBOドラマがNetflixやディズニー、Appleを凌いで、強さを示していたところです。ルパート・マードックをモデルにした「メディア王 〜華麗なる一族〜」が作品賞ら3部門を受賞し、ほか主要部門の賞をHBOドラマが制覇していました。
「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」はそんなHBOの今の勢いを感じることもできる作品です。前日譚ですから、前作を飛ばして見始めても支障はありませんが、「ゲーム・オブ・スローンズ」からハマると、HBOが長年築いた意地まで味わえて、満足度はより一層高いかもしれません。
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