外部の研究者だからこそ果たせる役割
――行政・政府の内部の人間ではない、外部の研究者だからこそ果たせる役割もあるのではないでしょうか。
仲田 泰祐(以下、仲田):それはあると思います。危機時において政策現場の方々はとにかく忙しい状況に置かれます。そのため、内部で議論しているうちに意識が目の前の問題に集中してしまい、広い視野でビッグピクチャーを見ることが難しくなっている場合も往々にしてあります。
そんなときに、私たちのような外部の研究者が一歩引いた目で客観的に分析し、その結果をお伝えすることで、「言われてみれば当たり前だけど出てこなかった視点」を提供することができます。それは、たとえば「緊急事態宣言をもう少し続けて感染者数を抑えることは、中・長期的には経済にとってよいかもしれない」とか、「五輪入国者の感染への影響は限定的で、国内在住者の行動の方が感染状況に大きな影響を与えるかもしれない」とか、そういった知見です。
2021年6月の五輪会場の観客に関する分析でも、私たちはそうした知見を提供できたと思っています。6月中旬頃に観客数の上限、あるいは有観客か無観客かについて検討されていたとき、東京都オリンピック・パラリンピック準備局等、当事者の方々の中では、その時点でどうすべきか決める方向での議論に意識が集中していました。そんな中で私たちは現場の方々に、「今決めてそれにコミットしなければならないのですか?」としつこく疑問を投げかけました。