チャールズ新国王「ひそかに築いた私財」の問題点 国民の生活苦で王室批判の温床に
王室の財産とチャールズ国王の個人資産が拡大した過去10年は、イギリスで厳しい緊縮財政が行われた時期と重なる。政府が予算を削る中、貧困層は急増し、困窮世帯に食品を無料配布するフードバンクの利用はほぼ倍増した。
宮殿で暮らしポロ競技を楽しむチャールズ皇太子(当時)のライフスタイルは、庶民の暮らしぶりに疎すぎるとして長く批判の対象となってきた。実際、2010年には学費の値上げに抗議し暴徒と化した学生たちに自らが乗るリムジンを襲撃されたこともある。
そしてチャールズ国王は、イギリスが貧困のさらなる悪化をもたらすと予想される「生活費の危機」に瀕している中で王位に就くこととなった。母と違い、知らず知らずのうちに格差の象徴と見なされるようになった人物がこうした国難の時代に王となったことで、王室の存在意義を問う声が改めて強まりそうだ。
イギリス王室の「4つの財布」
イギリス王室のビジネスを扱った『Running the Family Firm: How the Monarchy Manages Its Image and Our Money』の著者、ローラ・クランシー氏は、チャールズ国王はイギリス王室のビジネスを一変させたと語る。
「コーンウォール公領は過去数十年にわたって着実に商業化されてきた。CEOと150人以上のスタッフによって営利企業のように経営されている」とクランシー氏は言う。かつては単に「地主階級の広大な領地」と考えられていたものが、今では企業のように機能しているわけだ。
コーンウォール公領は王位継承者の収入源として14世紀に設立されたもので、皇太子だったころのチャールズ国王の私的・公的経費を実質的に賄ってきた。公領の資金総出力は強大で、例えば昨年の利益2800万ドルは、皇太子の公式給与(110万ドルあまり)をはるかに凌駕した。
王室の資産の全貌をまとめるのは簡単ではないが、その富は大きく4つのグループに分けられる。
1つ目は、なんと言っても国王に帰属する「クラウン・エステート(王室の不動産)」で、その資産はクラウン・エステート委員会によって管理される。チャールズ国王はその委員長となるが、事業運営について最終決定権を持っているわけではない。