チャールズ新国王「ひそかに築いた私財」の問題点 国民の生活苦で王室批判の温床に

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エステートの資産価値は公式には190億ドル以上とされており、そこにはショッピングモールやロンドンのウェストエンドの繁華街、数を増やし続けている風力発電所などが含まれる。王室メンバーは公式の賃貸収入のみ受け取ることができ、売却収益を得ることは許されていない。エステートは王室メンバーの個人資産ではないからだ。

エステートの利益(今年は約3億6300万ドルと見積もられている)は財務省に引き渡された後、利益額に基づいて「ソブリン・グラント(王室助成金)」の名目で王室に支給される。助成金が前年を下回る場合には、政府が穴埋めをしなければならない。2017年には、バッキンガム宮殿の改修費を捻出するため、王室への支給割合が利益の25%に引き上げられた。

前回王室に支払われた助成金は1億ドル程度で、チャールズ国王を含む王室メンバーはこれを各地訪問などの公務、スタッフの給与、王室の運営に関わるさまざまな経費の支出に充てている。警備費(政府予算の一部)はここには含まれず、額も非公開となっている。

租税回避地も巻き込む秘密の個人資産

これに続く2つ目の収入源はランカスター公領だ。9億4900万ドル相当の価値があり、王座に就いた者が所有する。

だが、その価値は王室第3の資産であるコーンウォール公領には劣る。これはチャールズ国王が皇太子として長年管理してきたもので、毎年数千万ドルの利益を生み出すようになっている。コーンウォール公領はチャールズ皇太子の私的・公的な資金源となってきただけでなく、王位継承者ウィリアム王子とその妻、キャサリン妃もその恩恵にあずかっている。

しかも、これらの資産にはイギリスの大部分の企業と違って法人税の納税義務は課せられておらず、投資内容を詳しく開示する義務もない。

2017年、「パラダイス文書」と呼ばれる内部文書が流出すると、チャールズ皇太子(当時)の公領が租税回避地にある複数の会社に何百万ドルも出資していたことが明らかとなった。そこには、親友が経営するバミューダ登記の会社も含まれていた。

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