「テレワーク頻度」と「幸福度」が正比例しない理由 在宅勤務で増えた余暇は何に使われているのか

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日本での通勤時間は総務省統計局の社会生活基本調査によると片道40分程度だが、車通勤の少ない首都圏では片道50分程度である。テレワークは勤務先への移動をカットでき、これまで通勤に費やしていた時間を、その分プライベート時間に充てられる。

テレワーク実施者と非実施者の趣味や余暇活動の違いを「生活者1万人アンケート調査」(以下、1万人アンケート)の結果から分析してみよう。

「あなたが休日や自由な時間などによくする趣味・活動は何ですか」という設問に対しての回答は、テレワーク実施者は「国内旅行」や「映画・演劇・劇場鑑賞」など外出を伴い、余暇自体を楽しむアクティビティの割合も、さらに「散歩」「ランニング・ウォーキング」など自宅や自宅周辺で実施できるアクティビティ割合も高くなっている。

具体的には、「国内旅行」(+10%)や「映画・演劇・劇場鑑賞」(+6%)、「パソコン」(+11%)、「ランニング・ウォーキング」(+10%)、「読書」(+8%)、「散歩」(+6%)、「スポーツ・フィットネス」(+5%)と、テレワーク実施者は、非実施者に比べると趣味や余暇活動の数字が相対的に高いことがみてとれる。

これらアクティビティはテレワークの合間の休憩時間にも実施できることを踏まえると、テレワーク実施者に余剰時間が生まれたことが、ライフ面の充実にもつながっていることが推察される。

なお、「積極的にお金を使いたい分野」の調査項目において、「趣味・レクリエーション関連」と回答した人は、テレワーク非実施者34%に対し、テレワーク実施者は41%であることからも、テレワークによる余剰時間が消費への活性化にもつながっていることがうかがえる。

ワークライフバランスの視点ではテレワーク導入によって、「ライフ」側へ大きく加速したといえよう。

テレワーク頻度が高いほど幸福度が高いわけではない

テレワークによって「ライフ」の時間が確保され、人々の生活が充実したように思えるが、果たしてテレワークの実施は生活者の幸せにつながっているのだろうか。またテレワークが多い人のほうが幸せなのであろうか。そこで1万人アンケートにより、テレワークの実施頻度と幸福度の関係について分析を行った。

調査では幸福度を「非常に幸福」を10点、「非常に不幸」を0点としたときの11段階で調査しており、ここでは幸福度の平均値による比較を行った。

結果は、テレワーク未実施者の幸福度平均値6.9に対し、テレワークの実施者の幸福度平均値は7.2であり、テレワーク実施者の幸福度が高いことが示された。

一方で、テレワークが多いほど幸せか、といった点については、テレワーク頻度を加味した分析からは否定的な結果が得られている。具体的には年間30日から120日程度テレワークを実施していた人の幸福度は相対的に高い(7.3~7.5)が、年間120日以上実施している人の幸福度は下がる(7.1)。

就業日数を年間240日程度と仮定すると、テレワークを週に1~3日程度実施している人がもっとも幸せに感じていることになる。

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