「テレワーク頻度」と「幸福度」が正比例しない理由 在宅勤務で増えた余暇は何に使われているのか

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テレワーク頻度が高い人において幸福度が下がってしまう背景には、コロナ禍において「夫婦独立の意識」が高まっていることとも関係があるように思える。

1万人アンケートには、家族観に関する設問として「場合によっては夫婦の間で秘密を持ってもかまわない」や「夫婦はお互い経済的に自立した方が望ましい」といった項目があり、この価値観は2015年調査以降に上昇してきた。背景としてはスマートフォン保有が中高年層中心に伸びたことにより、インターネットアクティビティの個人化が大きく進んだことが大きな要因であると考えていた。

夫婦独立の意識は伸びている

つまり、夫婦それぞれがスマートフォンという個人端末を活用することで、動画を楽しむことやショッピングする、SNSで他者とのコミュニケーションを楽しむといったことができ、夫婦がお互いに何をしているかがわからないが、それでよいとする考えが広まったと考えられる。

この夫婦独立の意識は、2021年調査で大きく伸びている。

具体的には、「場合によっては夫婦の間で秘密を持ってもかまわない」は2018年の61%から2021年は65%に、「夫婦はお互い経済的に自立した方が望ましい」は2018年62%から2021年68%といったように、2021年調査でさらに伸びている。

背景には、外出自粛やテレワークの普及による自宅勤務、通勤時間の削減により余剰時間が生まれ「おうち」時間が増えたことにより、これまで以上に夫婦が同じ場所で時間を共有することになったことが要因となっているのではないか。

コロナ禍以前は出社が当然であり、どちらか一方でも働いていれば、各々が別々の場所で時間を過ごすことから、ある程度の発散やガス抜きができていた。それが、コロナ禍によってその機会が失われてしまったことにより、意識的に個人個人の時間を持ちたいという気持ちが高まったとも考えられる。

夫婦であっても、すべてを相手と共有するのではなく、それぞれの趣味や興味、人間関係などは個人のものとして持ち続ける、新しい夫婦の在り方が求められているといえそうだ。

林 裕之 野村総合研究所 コンサルティング事業本部 マーケティングサイエンスコンサルティング部 シニアコンサルタント

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はやし ひろゆき / Hiroyuki Hayashi

2009年東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻修了後、グローバルコンサルティングファームを経て、2015年野村総合研究所入社。専門領域は、生活者の意識・行動分析、需要予測などの予測モデル構築、購買実績データによる顧客の購買行動特性分析など、データに基づくマーケティング活動支援や戦略立案。これまで執筆した書籍(共著)に『なぜ、日本人は考えずにモノを買いたいのか?』(2016年)、『日本の消費者は何を考えているのか?』(2019年、以上東洋経済新報社)がある。

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