物価上昇時代に「安売り」を続ける日本の末路 日本人が京都に泊まれない時代が来る

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そんな時代が長く続いたため、メーカーも卸も小売りもサービス業も、「値上げ」というものに慣れていない。だからこそ、「本当に値上げしていいのか」「値上げをしたら顧客が離れていくのではないか」「値上げするとして、いくらにすればいいのか」「それをどのように伝えたらいいのか」と、さまざまな迷いを抱えているのだ。

このような状況において、我々には2つの選択肢がある。1つは「頑張って価格を維持すること」。そして、もう1つは「値上げをして、適正な価格で販売すること」。

最近、巷で「値上げせずに頑張ります」といった貼り紙を見ることがしばしばある。物価の上昇に対してコストカットや効率化でなんとか価格を抑えようとしているのだ。先日観たテレビ番組では、ある大手企業の社長がコストカットによる価格維持のために、社長室のエアコンを切っているという話が紹介されていた。

こうした努力には頭が下がる。しかし……今後、今以上の物価上昇が見込まれている中、果たしてその努力をいつまで続けることができるのだろうか。

私が推奨する選択肢は当然、「値上げをして、適正な価格で販売すること」だ。そうしないと多くの店や企業が立ち行かなくなる、という理由はもちろんある。ただ、それだけではなく、このまま「値上げせずに頑張る」ことを続けると、日本経済の発展が阻まれ、日本の世界における地位はさらにずるずると下がっていってしまうと思うからだ。

いつの間にか「安い国」になってしまっていた日本

コロナ禍直前の2019年、訪日観光客数は過去最大の3000万人を超えていた。都心や観光地には外国人が溢れ、ちょっとしたバブルの様相だった。ではなぜ、外国人が日本に大挙してやってきていたのか。その大きな理由は「日本が安いから」だ。

アメリカ在住の知人の教授が先日、アメリカの「一風堂」に行ったところ、ラーメン1杯にトッピングを付け、ちょっとしたつまみとビールで60ドル、つまり約8000円もしたのだという。アメリカの物価はこの20年で約2倍になったというが、この話を聞く限り、それでは済まないかもしれない。

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