物価上昇時代に「安売り」を続ける日本の末路 日本人が京都に泊まれない時代が来る
当時、中国の所得レベルが上がり、巨大な富裕層および中流層が生まれてきていたときだった。これらの人々の旺盛な購買欲と購買力に、日本が「買い負け」していた。それがカニの価格上昇の理由だったのだ。
戦後の日本で経済が復興しつつある当時、アメリカのドラマを見た人がその家庭内で当たり前のように使われている洗濯機や冷蔵庫を見て、消費意欲を掻き立てられたという。そして、生活が豊かになるにしたがって、こうした家電が飛ぶように売れるようになった。
まさに同じことが中国で起きていたわけだ。日本のカニの味を知った中国の富裕層や中流層が、「こんなにおいしいものがあるのか!」と消費意欲を掻き立てられ、実際にそれを手に入れるだけの購買力を手に入れたのだ。
「買い負け」ていたのに気がつかなかった
そういう視点を持つと、多くの分野で日本が「買い負け」している状況が見えてきた。不動産がその典型で、私の知人の不動産会社社長によれば、一等地の優良物件になればなるほど、外国資本がすぐに買っていくという。
ただ、こうした「買い負け」による物価上昇に気づきにくかったのは、一方で低価格の商品も流通していたからだ。カニならばロシアなどをはじめとした安価な海外産のものが平均価格を下げていたし、それらの調達にも苦労はしなかった。全体をざっくり見ているとこの「買い負けによる物価高騰」に気づきにくかった。
つまり、「いいものは秘かに取り合いになっていて、それ以外のものは一見、変化がない」という状況が長く続いたわけだ。
しかし、事態は大きく動いた。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などにより、突然、さまざまなものの流れが滞り、不足し、取り合いになった。特に燃料や小麦粉など、多くの商品・製品に原価として関わるものの値段が一気に上がり始めた。
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