120カ国超訪れてたどり着いた「世界最高の宿」 写真で見る「スリランカ『バワ』建築を訪ねて」

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21世紀に入り、建築家として世界中に注目されるようになった後、ガイドブックや雑誌など、一般的な旅行者向けのメディアはこぞってバワを取り上げた。コロナ前までは、日本人こそ、最もバワを愛好してきた国民という表現は言い過ぎとはいえないだろう。

1937年製のロールスロイス
ナンバー11の入口にはバワの愛車である1937年製のロールスロイスが鎮座し、その横の壁にはシルヴァの太陽をモチーフとしたバティックが輝く(筆者撮影)

ジェフリー・バワの建築についてまとめた『熱帯建築家』の著者(隈研吾氏と共著)であり、「山口由美と巡る~熱帯建築家ジェフリー・バワの美学に触れるスリランカの旅」での案内役もつとめてきた山口由美氏は、「日本の旅行者にとって、バワは世界遺産、アーユルヴェーダ、紅茶などと並ぶ必須コンテンツになっている」と指摘する。

山口氏は、「西欧の建築は、強固な箱を作り、自然と遮断するのが基本です。一方、日本の建築は障子や縁側が象徴するように、自然を建物の中に取り込む考え方があります。この日本的な建築感がバワ建築と親和性があるのではないか」と解説する。

2022年7月スリランカに入国した日本人は169人

だが、「ナンバー11」のゲストブックには、2020年春以降、日本人の書き込みはわずか1件になっていた。これはバワうんぬんというよりも、日本在住者がそもそもスリランカに訪れなくなったことによるものだろう。

2022年7月のスリランカへの入国者はイギリス人が9257人、ドイツ人、フランス人、カナダ人が3000人台なのに対して日本人は169人にとどまっている。

2022年8月現在、スリランカにおける人口あたりの新型コロナウイルス感染者数は、日本の約200分の1にすぎなかった。ルヌガンガやナンバー11でも、他のゲストと接触する機会はほぼ皆無だった。

だが、経済破綻から旅行に支障をきたすのではないかと考える人もいるだろう。実際にスリランカを旅行して気になったのは前述の停電のほか、ATMでお金を下ろすのが難しかった点だ。Uberも現金払いしかできなかったこともあり、当面は米ドルなどの現金を一定額もって入国するほうが確実といえる。

ルヌガンガやナンバー11に、インスタ映えのようなわかりやすい美しさはない。サービスにしても財団のスタッフは親切だが、いわゆるプロではない。だが、一人の建築家が信念に基づいて緻密につくりあげた私的な空間を独占し、その意図に思いをはせる贅沢は、商業的な大型ホテルでは決して味わうことができない。ツーリストが少ない現在は、その意味で好機ともいえる。

バワに関心がある方はもちろん、興味を持った方もぜひ一度ルヌガンガ、あるいはナンバー11に足を伸ばしてみてほしい。

橋賀 秀紀 トラベルジャーナリスト

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はしが・ひでき / Hideki Hashiga

東京都出身の50代。早稲田大学卒業。「3日休めれば海外」というルールを定め、ほぼ月1回の頻度で海外旅行に出かける。訪問国は130カ国。共著に『エアライン戦争』(宝島社)など。『週刊東洋経済』で「サラリーマン弾丸紀行」を連載した。Yahoo!ニュース エキスパート。記事の内容についてのお問い合わせ・取材の依頼などについてはこちらまで。

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