120カ国超訪れてたどり着いた「世界最高の宿」 写真で見る「スリランカ『バワ』建築を訪ねて」

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また、椅子は重く、指定された位置から動かすことが難しい。椅子の位置や高さは建築家が綿密に計算した結果決めたもので、それを動かすということは建築家の意図から外れることを意味する。多少不便さがあったとしても、バワの意図をそのまま受け止めるのがよいのだろう。

シナモンヒルハウスのリビング
シナモンヒルハウスのリビング。自然と人工の境界の限界に挑んでいる(筆者撮影)

「巨大なボンサイ」

ザ・ハウスとよばれるメイン棟には1つだけレストランがある。といってもスタッフがサービスを兼ねるシンプルなオールデイダイニングだ。テーブルをガーデンに出すと、よりプライベート感が増すので、毎回セッティングしてもらった。

バワが景観維持のために購入した無人島を望むディナーテーブル(筆者撮影)

ここには大きなフランジパニの木がある。バワは、枝に重しをかけて、視線を遮らないようにしたそうだ。スタッフは「巨大なボンサイ」のようなものですねと笑うが、この尋常ならざる景観に対する執念がルヌガンガの魅力といえる。

眼下左手に広がる湖には島が浮かんでいるが、そこに人が住む気配はない。バワが開発を防ぐために自分で購入したのだという。右手には人家の照明や行きかう車のクラクションが遠くまで響いてくる。

フランジパニの木
バワは見通しを確保するためにフランジパニの木に重しをかけた(筆者撮影)

だが、19時過ぎ、停電で照明はほぼすべて消え、かつてバワが眺めていたものに近い景色が現れた。スタッフによれば、ほぼ毎日この時間に停電は起こるのだという。ルヌガンガは自家発電が可能だが、個人経営の飲食店などは冷蔵庫や冷凍庫の停電をどうしのいでいるのか。スリランカ経済状況の厳しさを目の当たりにすることになった。

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