国葬を強行「閣議決定」今さら聞けない基本の基本 法的根拠なく国会のチェック働かず暴走の恐れも

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国会で議員から内閣に質問主意書が提出されると、内閣は原則的に7日以内に文書で答弁しなければなりません。そして内閣は、その答弁を閣議決定しなければならない義務を負うことになります。

「桜を見る会」に関する質問では「反社会勢力の定義は困難」との答弁書を閣議決定します。さらに、「『内閣総理大臣夫人』は、公人ではなく私人であると認識」という答弁書も閣議決定します。

小泉進次郎環境相(当時)の「セクシー」発言に関する質問では「(セクシーという言葉には)正確な訳出は困難だが、ロングマン英和辞典(初版)によれば『(考え方が)魅力的な』といった意味がある」との答弁書を閣議決定しています。

問題視された言動であっても、閣議決定されているわけですから、それが内閣の方針であるという強い印象を与えられます。閣議決定は、国会審議を経ずに発せられる政令を決めたりできるので、非常時に迅速な対応ができる利点がありますが、逆に言えば国会のチェックが利かず、内閣の暴走を許すリスクもあります。

今回の国葬の法的根拠は?

国葬とは国が行う葬儀であり財源が国であること。歴代天皇の、明治天皇、大正天皇、昭和天皇のほか、軍人の東郷平八郎、山本五十六に国葬がおこなわれました。例外は、吉田茂元首相で、このときには、佐藤栄作首相が閣議決定をおこなっています。

法的根拠になる国葬令は日本には存在しません。日本国憲法が1947年に施行されたため失効しているのです。岸田文雄首相の法的根拠は、内閣府設置法の第4条「国の儀式」として閣議決定すれば可能だという点です。

9月6日、「国葬」費用について、岸田首相は総額16億6000万円を要することを明らかにしました。8月下旬に閣議決定した際の支出額である約2億5000万円から、大幅増額となりました。その結果、主要メディアによる世論調査においては「国葬を支持しない」が「国葬を支持する」を上回る結果となっています。あわせて岸田内閣の支持率も下落傾向にあります。

政府は最初から費用総額を包み隠さず国民に提示すべきだったのではないかと筆者は思います。筆者は国葬に反対ではありませんが、強行という手段は禍根を残します。曖昧に決まった国葬。多くの人が望まない形で強行されようとしています。

尾藤 克之 コラムニスト、作家、著述家

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びとう かつゆき / Katsuyuki Bito

東京都出身。議員秘書、大手コンサルティングファームで、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎元首相夫人)を運営しライフワークとしている。NHK、民放のTV出演、協力多数。コラムニストとしても、「JBpress」朝日新聞「telling,」「オトナンサー」「アゴラ」「J-CASTニュース」で執筆中。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)、『即効! 成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)など著書多数。埼玉大学大学院博士課程前期修了。経営学修士、経済学修士。

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