国葬を強行「閣議決定」今さら聞けない基本の基本 法的根拠なく国会のチェック働かず暴走の恐れも
閣議決定に反対する閣僚がいたら、首相は罷免をしたうえで閣議決定を行います。戦後、閣僚の罷免は5例しかありません。有名なものとしては、2010年5月28日、鳩山由紀夫首相が沖縄のアメリカ軍普天間基地移設問題に関する政府方針の署名を拒否する意向を示した社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相を罷免しています。
2005年8月8日、小泉純一郎首相が郵政民営化法案を巡る衆院解散に同意しなかった島村宜伸農相を罷免、自ら農相を兼任して衆議院を解散します。これは会社の取締役会に例えるとわかりやすいと思います。
会社法上、取締役会は業務執行にかかわる意思決定機関として位置づけられます。取締役会の議決には取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行いますが、最終的な決議は全会一致で決められることが多いと思います(日本では社長に反対意見を述べることは考えにくいので全会一致です)。
閣議決定のスピード感
最近のわかりやすい事例を紹介します。政府は、新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象とする同法改正案を閣議決定し国会に提出しました。2020年3月11日に衆院内閣委員会で審議入りし、13日の参院本会議で成立しました。
国会審議では緊急事態宣言の発令要件や、発令後に可能とされる自粛要請などの私権についてどのように扱うか議論されましたが、スピード感のある決定でした。
これにより、首相が緊急事態宣言を発令すれば、対象とされる地域の都道府県知事は、学校、保育所、床面積1000平方メートル超の映画館、百貨店、博物館などの使用、イベント開催の制限や停止の要請が可能になりました。食料品、日用雑貨品の買い出し、必要な場合を除く外出の自粛要請もできます。
首相の権限が強まり、企業活動や個人の活動(私権)が大きく制限されます。野党の立憲民主党などは改正案に国会の事前承認を必要とする規定を盛り込むよう要求しましたが、与党は応じませんでした。
閣議決定は内閣の意思を示す重要な意思決定です。「内閣が○○について閣議決定をした」と報道があった場合、それは「法律を制定するための内閣が強い意思を表明する」と伝えていることです。
実際には内閣の意思を閣僚間でコンセンサスをとっただけですから、法律として制定するには国会の承認が必要になります。内閣の意思決定のみでは法律として制定されません。国会で否決されれば「法律は制定されない」ということです。
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