ドイツの研究では、完全に誤ったフェイクニュースよりも、部分的に誤ったフェイクニュースのほうが信頼性は高く説得力があり、訂正が困難であることが明らかになっている。
国立感染症研究所のケースでいうと、同機関は確かにリリースを打っており、切り取られた部分も文章には書いていた。しかし、それを誤った文脈で提示することで、「国の専門機関がワクチンに効果がないと認めた」というミスリードな投稿につなげたのである。これにより投稿の信憑性が増す。
今回の件でも、CDCは今年8月にガイドラインを簡素化して、濃厚接触者の隔離を不要とし、代わりに10日間は高性能のマスクを装着することや、5日目に検査を受けることなどを求めた。これを根拠に反ワクチンサイトでは、「CDCがワクチンよりも感染による免疫のほうが有効と判断した」といった拡大解釈がなされていたのである。
さらに、その情報が日本に輸入される際には、「CDCについて言及している英語のニュースサイトがこのように述べている」と紹介される。英語のニュースソースをいちいち確認しにいく人は日本にはほとんどおらず、「英語のニュースに書かれているんだ」という事実が信憑性を飛躍的に高めるのである。
人は「自分の信じたいものを信じてしまう」というバイアス(確証バイアス)を持っている。反ワクチンの人は、このように一部事実を含んだり、権威付けされたりしたミスリーディングな情報を見ると、思わずそれを信じて拡散してしまうのである。
フェイクニュースは拡散が速い
そもそも、フェイクニュースは社会に広まりやすいという特性を持っている。
2018年、「フェイクニュースのほうが真実のニュースよりも拡散スピードが速く、また、拡散範囲が広い」――衝撃的な研究結果が、科学誌Scienceに掲載された。当該論文では、300万人のTwitterユーザーの間で流布した12万6000件のニュース項目を分析した。分析の結果、次の3点がわかったという。
・真実が1500人以上にリーチするには、フェイクニュースの約6倍、時間がかかる
・フェイクニュースのほうが真実より、約70%高く拡散されやすい
論文の著者らはその理由について、フェイクニュースの目新しさを挙げている。フェイクニュースと事実のニュースについて分析したところ、目新しさに関するどんな指標と照らし合わせても、フェイクニュースが事実を上回っていたのだ。
人は目新しいものに注目しやすく、また、人々に広めたくなる性質を持っているため、目新しいフェイクニュースを見ると思わず拡散してしまうのである。
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