キリン「高単価ビール苦戦」で早くも迎えた正念場 初年度目標割れでプレミアム化戦略に黄信号

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スプリングバレーの取扱数が少ないことについて、あるコンビニチェーンの幹部は「新商品の発売直後は販促も多く、(当社でも)取り扱うが、売れずに生き残れないものが大半だ。特に高級ビールは動きが鈍く、売れる場所に置きたくない」と吐露する。

売れなければ、取扱数は減らされ、その結果、さらに売れなくなるという悪循環に陥ってしまうというわけだ。キリンビールとしては、スプリングバレーの知名度を拡大させ、「売れる高級ビール」だということを証明する必要がある。

新フレーバーを投入し、挽回へ

逆風を挽回すべくキリンが投入するのが、9月13日発売の新フレーバー「スプリングバレー シルクエール<白>」だ。年内に50万ケースの販売を目指し、スプリングバレー銘柄のラインアップの強化を図る。

上半期は前年割れに終わった「豊潤」も、2022年の通年ではシルクエールの投入により巻き返しを図り、前年比20万ケース増の160万ケースを目指す。シルクエールの拡販によって、スプリングバレー銘柄の知名度向上も期待できるほか、同じブランドの商品が2種類並ぶことで、店頭での取扱数の拡大などにもつながる。今後も新フレーバー投入を検討している。

さらに、10月には原材料高騰の影響を受け、ビール各社は20円から30円程度の値上げを予定しているが、スプリングバレーは価格を据え置く計画だ。同じ高級ビールに位置付けられるサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」やサッポロビールの「エビスビール」などは、店舗によってはスプリングバレーと同水準の価格になる可能性があり、スプリングバレーにとっては追い風になりうる。

ビール再成長に向けて大役を担うスプリングバレー。課題山積の中で、シルクエールの投入と価格据え置きがどのように効果を発揮するのか。肝いりであるビール事業のスプリングバレーが真に成長できるのかの試金石となりそうだ。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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