「3歳園児バス置き去り」過熱報道に欠けた視点 同じ事件を二度と起こさないために何が必要か

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記者会見する川崎幼稚園の増田立義理事長兼園長と杉本智子副園長
記者会見する川崎幼稚園の増田立義理事長兼園長(中央)。手前は杉本智子副園長=9月7日午後、静岡県牧之原市(写真:共同通信)

静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」に通う3歳の女児が通園バスの車内に取り残され、熱中症で亡くなった事件から4日、園による記者会見から2日が過ぎた今なお、さまざまな報道が飛び交う状態が続いています。

この間、テレビやネット上では多くのメディアが事件をトップニュースで扱っていました。各メディアで共通していたのは、「なぜ最悪の事態を防げなかったのか」「どこに園側のミスがあったのか」を手厚く報じていること。

主に、バス車内の確認、朝の会・部屋移動・給食時の人数確認、登園情報の確認、保護者への確認など、チェックできるタイミングが多かったにもかかわらず、それらがすべてスルーされていた。送迎だけでなく、運転自体をあまりしていない人に任せた。バスの側面がイラストで覆われているため外から車内が見えづらかった。

大半のメディアがこれらのミスを挙げ、さらに、会見での受け答えを映すことで園を断罪し、見る人々の怒りを増幅させるような報道に終始しています。ネットニュースにも、情報番組のMCが涙を流し、コメンテーターが声を荒らげた様子を報じる記事があふれていますが、このような見る人々の怒りを増幅させる“断罪劇場型”の報道に違和感を覚えざるをえません。

今回の事件は、当日のドライバーを務めた高齢の園長だけでなく、副園長、担任、副担任など園の関係者に問題があったことは誰が見ても明らか。特に記者会見で他人事のように書面を読むだけで感情が乏しく、被害園児の名前を間違えてしまう高齢の園長を断罪し、怒りをぶつけ続けることに危うさを感じてしまうのです。

「再発防止」の割合が極端に少ない

それよりも真っ先に問題視すべきは、なぜ1年前に起きた事件の教訓が生かされなかったのか。

昨年7月、「福岡県中間市の保育園で5歳の園児が通園バスに取り残されて熱中症で亡くなった」という痛ましいニュースが報じられました。当時もメディアは今回と同じように断罪と怒りを増幅させるような報じ方で、「こんなことは二度とあってはならない」という論調を繰り返していましたが、わずか1年あまりで再発してしまったのです。

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