「3歳園児バス置き去り」過熱報道に欠けた視点 同じ事件を二度と起こさないために何が必要か
問題はメディアが、誰かを叩くことが目的のような“断罪劇場型”の報じ方をすると、それを見る人々や保育関係者ですら感情的に怒るだけで思考停止してしまうこと。「欧米では置き去り防止のセンサーがある」などの同じ事件を起こさないための対策を報じる割合が極めて少なく、けっきょくそれぞれの現場任せに終わるため、今回のようなヒューマンエラーが事件につながってしまうのです。
メディアに求められているのは明らかにミスが多かった今回の園だけでなく、他のケースも挙げながら、注意喚起していくこと。たとえば、置き去りが起きてしまう主な理由は「意識の低下」「人手不足」「ルールやシステムの不備」の3点と言われていますが、そのひと言だけで片付けられるものではありません。
今回、事件を起こした園では、「園児1人ひとりが登園確認をするシステムがありながら、けっきょく職員がまとめて入力処理していた」ことが報じられました。また、他園でも「人数確認の回数やダブルチェックを増やした結果、『他の人も確認しただろう』という意識が生まれ、個々の確認が雑になってしまった」などのケースも多いと聞きます。
人手不足が意識の低下につながっていないか。「忙しい」「余裕がない」ことを理由にルールやシステムが有名無実化していないか。「慣れる」が「なめる」につながっていないか。
保育の分野に限らず、ヒューマンエラーをゼロにすることは難しいでしょう。だからこそ、ヒューマンとテクノロジーをどう組み合わせて事件や事故を防いでいくのか。真剣に考えるきっかけをメディアが提起してほしいのです。
全国の幼稚園・保育園が動揺している
もう1つ、「メディアの報道で決定的に欠けている」と感じたのは、日本全国の幼稚園・保育園の現状とフォロー。今回の事件で日本全国の幼稚園・保育園が動揺していることは想像に難くありません。
実際、私の自宅近くにある保育園は、すぐに人数確認の回数を増やし、それを保護者に周知したそうですし、別の幼稚園は送迎バスのチェックを2人がかりで複数回行い、念のため施錠もやめるか検討中と聞きました。
また、事件の余波は、送迎バスの置き去りに関することだけではありません。園児が園内のどこかで身動きが取れなくなったり、園外に出てしまったりなどのケースに対応できるよう、繰り返しの人数確認はもちろん、トラブル時のシミュレーションをあらためて行っているようなのです。
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