損失100億、シャインマスカット「中国流出」の痛恨 中国の栽培面積は日本の30倍、逆輸入の危機も

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韓国の市場で売られる現地産のシャインマスカット
日本の高級フルーツ、シャインマスカットが中国や韓国に持ち出され、現地で栽培されたものが第三国にまで出荷されている。写真は韓国の市場で売られる現地産のシャインマスカット(写真:JATAFF提供)
日本が誇る高級フルーツ、シャインマスカット。その苗が中国や韓国で栽培され、第三国にまで出荷される事態となっている。
8月29日発売の『週刊東洋経済』では「食料危機は終わらない」を特集。値上げの秋を巡る企業の攻防や、世界で巻き起こる食料争奪戦、日本の農業の大問題に迫っている。

「香港の取引先から、中国産の『晴王』がコンテナで運ばれているのを見たと教えてもらった。梱包用の段ボール箱まで、本物の晴王を入れているのと同じJA岡山のロゴがプリントされているものだったので、一見して本物と区別がつかない」

シャインマスカットの代表的なブランドである「晴王」を出荷するJA全農おかやま(全国農業協同組合連合会岡山県本部)では、担当者が頭を抱える。

中国の栽培面積は日本の30倍

糖度が高く皮ごと食べられる手軽さから、高い人気を誇るシャインマスカット。価格は1パックで2000円前後から1万円を超える高級品もあり、贈答品としての需要も高い。

週刊東洋経済 2022年9/3号[雑誌](食料危機は終わらない)
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このシャインマスカットは、実は日本発祥だ。農産物の品種開発などを担う農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)が33年をかけて生み出したもので、山梨、長野、岡山、山形県などが産地として知られている。

ところが、この種苗が無断で中国や韓国に持ち出されて現地で栽培され、安価な「海賊版」として第三国にまで出荷される事態になっている。農林水産省の試算では、中国におけるシャインマスカットの栽培面積は、2020年時点で日本の30倍にあたる5万3000ヘクタールにも及んでいる。

中国産のシャインマスカットには、「シャイン」を音で表現した「香印翡翠」(シャンインフェイツィ)や「香印晴王」(シャンインチンワン)といった名称がつけられている。

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