「任天堂=ずっと好業績の企業」イメージは誤りだ 直近は絶好調だが赤字に苦しんでいた時期も

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5
拡大
縮小

次に、決算数値の違いに目を向けると、営業利益のみならず、原価にもかなりの大きな差が見られます。任天堂は10年前から変わらずゲームの会社ですが、これほど売上原価に差があるのは、どのような理由が考えられるでしょうか。

ゲームをされる方なら実感があるかもしれませんが、最近ゲームソフトを購入するときに、パッケージではなくダウンロードで済ますことが増えていませんか。ほんの10年くらい前までは物理的なゲームソフトが中心でしたが、近年デジタルコンテンツの販売が増えてきていることを考えると、原価は下がってきているのかもしれません。

また、コロナ禍の影響でゲームがすごく売れたというニュースが取り沙汰されたことからも、直近の営業利益が高くなっていそうですね。

ということで、正解は②が2021年の決算ということになります。

出典:『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方[実践編]』

同じ会社で同じような商品を販売し続けていても、約10年でここまで財務数値が変わることがあります。任天堂は知名度のとても高い会社ですが、意外と「どのような特徴のある会社なのか」までご存じの方は少ないと思いますので、ここからは、任天堂の企業としての特徴を一緒に分析していきましょう。

今回のクイズは、選択肢②が直近の2021年3月期の決算数値だったわけですが、「どうして約10年でこれほど業績が変わるのか」という点が気になってきたのではないでしょうか。

そこで今から、任天堂のさまざまな財務数値を時系列に並べて、どのような企業なのかを実際に調べていきましょう。

その企業は「本当にずっと好業績」なのか?を考える

一般的に任天堂という会社名を聞いて思い浮かべるのは、日本を代表する「好業績」のゲームメーカーであるというイメージかと思います。企業を調べる際には、事前に仮説を立てて調べることが重要ですので、本当にイメージどおりの会社なのかどうか、任天堂の売上高を15年分並べて、業績のトレンドを確認してみましょう。

※各年3月期の有価証券報告書をもとに作成/出典:『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方[実践編]』

このように、時系列で業績を並べてみると、15年の間に大きな売り上げのブレが存在することが読み取れます。数字で比較すると、いちばん売り上げを上げている時期が約1兆8000億円で、いちばん売り上げが少ない時期が、約4900億円と、1兆円以上も離れています。このことから、任天堂は業績の変動が大きい会社だということがわかりました。

ところで、任天堂といえばソフトやハードなど、過去に生み出したヒット商品がロングセラーになることで、開発費などの回収を済ませた商品が積み上がり、継続的な黒字に貢献しているのではないだろうかという疑問が湧いてきます。

ということで、次は「継続して黒字」という仮説を検証するために、営業利益率を確認してみたいと思います。

次ページ実は赤字の時期もあった任天堂
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT