東大理Ⅲ生留年取り消し訴訟、東大に不信募る訳 「他学生と取り違えた」成績発表後に大幅減点の謎

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杉浦さんには、教養学部から「成績確認申請をすると成績評価が下がるケースがある」という説明が繰り返しあった。その申請をしたのは6月19日だ。ところが、実際には、18日に17点の減点が行われたという。成績発表があり、杉浦さんが診断書をもらって担当教官に受け取りを拒否されるなどした17日の翌日のことだ。

成績の取り違えについての訴訟が起こる前の筆者の取材に対し、東大教養学部は「成績評価は教員による十分な確認のうえで付与され、誤りがないことが前提となっています。疑義のある学生から成績評価の確認申請があった場合に改めて精査しています」(広報・情報企画チーム)との回答があった。成績確認申請がなければチェックをしないというのだ。

ところが、杉浦さんについては申請前に誤りを修正したという。改めて確認すると、「係争中につきご質問への回答は差し控えさせていただきます」(同)との回答があった。

取り違えが判明した後の検証についても同学部は「採点及び成績付与の方法が同様となる学生全てについて確認しています」とする。これはオンライン受講者のことを指しており、ミスの原因は「大多数の対面授業と同時に少数のオンライン受講者に対して異なる対応を同時に行うことで、現場の負担が増していた」ためだという。「同科目でも、それ以外の学生については確認を行っていません」と、検証は一部にとどめている。

学生自治会も抗議

このミスに対し、東大教養学部学生自治会が8月22日、「公平な進学選択の実施には、厳密な評点の管理が必要不可欠です。今回の取り違えは、前期課程に在籍する学生はもとより、後期課程の各学部当局に対しても、進学選択の運用体制に疑問を抱かせる」とする抗議文を出すなど、東大の学生に大きな波紋を投げかけている。

東大は、教養学部での成績で進学先が変わる「進学選択制度」をとっており、教養学部での成績で人生が変わってしまう学生がいる。それだけに成績取り違えは深刻に受け止められている。

杉浦さんの基礎生命科学実験の評価に話を戻そう。

その内訳は8月半ば、大学側から杉浦さん側に口頭で伝えられた。それは次のようなものだった。

   受講日    得点     配点 備考
  4月19日 12点   20点 出席
     26日   0点   10点 手続きを忘れて欠席扱い。リポートは提出
  5月  3日 10点   15点 出席
   10日   0点   15点 出席。リポート期限の17日にコロナ発症
   17日   0点   20点 欠席。コロナ発症
   24日   4点   20点 27日に補講
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