新型コロナウイルス感染症の発症により授業を受けられず、留年が決まった東京大学の2年生が、留年の取り消しを求めて東京地方裁判所で争っている。東大側は学生の成績がお話にならないレベルの低さだったと説明する。しかし、成績発表後に大幅な減点があり、その理由を「評点の取り違え」と説明するお粗末さで、学生の間からも大学に対する不信の声が強まっている。
留年処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴
この学生は、東大教養学部理科Ⅲ類の2年生、杉浦蒼大さん(20)。8月19日に留年が決まり、留年処分の取り消しを求めて東京地方裁判所に提訴した。さかのぼる8月4日にも記者会見をして、コロナ感染で授業を受けることができず、その補講を求めたところ、評価を大きく下げられたことを明らかにした。
その経緯は次のようになっている。
杉浦さんが成績「不可」とされたのは基礎生命科学実験で、今年4~5月に6回の授業があった。カエルの解剖などの実験について、毎回リポートを提出する。杉浦さんはオンラインで受講した。この5回目となる5月17日の朝、東京でひとり暮らしをする杉浦さんはコロナを本格的に発症。39℃超の発熱と頭痛などで意識がもうろうとして、午後にあった授業は受けられなかった。
重い症状は続き、翌週の24日の授業も受けられなかった。翌25日に、ようやく担当教官にメールで事情を説明した。しかし、17日の補講は認められず、24日の分だけ、27日に受けることができた。
その後も頭痛やだるさなどの後遺症で自宅療養を続けたが、6月17日朝に成績発表があり、基礎生命科学実験の「不可」を知った。このため、杉浦さんは最初に診断を受けた診療所と、後遺症の治療を受けている診療所から計2通の診断書をもらい、担当教官に提出しようとした。ところが、教官からは「もはや特段の意味はありませんので提出不要とします」などとするメールがあり、受け付けてもらえなかった。
教官は、「不可」の成績に関する問い合わせについてもメールで「教員と学生が直接やりとりすることは禁じられています」と、「成績評価の確認」の制度を使うよう求めた。
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