東大理Ⅲ生留年取り消し訴訟、東大に不信募る訳 「他学生と取り違えた」成績発表後に大幅減点の謎

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杉浦さんは、症状回復後に改めてリポートを作成して大学に提出している。大学側はこれを認めていないが、渋谷医師は、このリポートについて「十分に単位認定の評価を受けるべき内容」と評価している。

渋谷医師は今回の裁判で、こうした内容を意見書として東京地裁に提出した。

この案件に先立つ6月6日、東大教養学部は新型コロナ感染やその濃厚接触者になったことによる「代替措置」を中止すると発表した。その理由について、筆者の取材に「他大学とは決定的に異なる本学特有の制度」である「進学選択制度」をあげた。先述のように、2年生前期までの成績で進学先が決まるため、学生の人生を左右することもある制度だ。

東大教養学部で問題になっているのが「虚偽申請」だという。文書による回答で、「虚偽申請をした学生が学修時間をより多く確保できたうえで通常の定期試験同様に100点満点で評価される機会を得ることから、進学選択制度の前提となる公平性を確保するうえで大きな問題」と答えた。

感染・濃厚接触していても登校する学生が出る

もともと優秀な学生が集まる東大で、さらにしのぎを削る争いがうかがえる話ではある。これに対して、学生自治会は、「今後の進路や人生が大きく左右されるものであるがゆえに、感染・濃厚接触していても登校する学生が出てくる」と指摘した。

虚偽申請をする学生がいる前提に立てば自然に出てくる疑問だが、この点については「学生には感染防止のための行動指針を周知し、指針に沿った行動をお願いしていますので、罹患及び濃厚接触者となった場合にそのことを認識しながら登校することは厳に謹んでもらいたい」と、学生の良識に期待する回答があった。

コロナが過去最大の感染者数を記録する「第7波」の中で、大学として難しい判断を迫られていたことは理解できる。一方、大学から杉浦さんへの文書には、必修科目であるため「科目担当教員からの指示には一層の注意を払い、単位の取得に励む必要があります」(6月27日付の教養学部長らによる書面)という指摘もある。指示を守るかどうかを重視しているかのような内容で、選別のための論理にも見える。

東大は日本の最難関大学で、将来の日本を背負う人材の宝庫だ。入学者が必ず属する教養学部でこのような形式論がまかり通ることは、大きな変化に直面している日本社会の対応力にも関わる問題になりかねない。一学生の留年問題にとどまらない課題があると考えるのは私だけではないだろう。

松浦 新 朝日新聞記者

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まつうら しん / Shin Matsuura

1962年愛知県生まれ。東北大学卒業後、NHKに入局。1989年朝日新聞入社。東京本社経済部、週刊朝日編集部、特別報道部、経済部などを経て、2017年4月からさいたま総局。共著に『ルポ 税金地獄』『ルポ 老人地獄』(ともに文春新書)、『電気料金はなぜ上がるのか』(岩波新書)、『プロメテウスの罠』(学研パブリッシング)ほか。

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