家族ががん終末期、いつ介護休暇を取得すべきか 家族・弟で母親を看取ったAさんのケースを紹介

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何より、家族だからできるケアもあります。患者さんからすれば、医師や看護師に頼みづらい「ちょっとしたこと」は意外と多いものです。例えば「口が渇くから、舌の上に少し氷を乗せてほしい」「ちょっと体勢を変えてほしい」など。体が思うように動かないからこその「ちょっとしたリクエスト」も、家族になら頼みやすいですし、家族がそばにいるという安心感は何にも代えがたいのではないでしょうか。

最期を家で過ごすということは、すなわち、患者さんがだんだんと弱っていく姿を見ていくことでもあります。家族は、それを受け入れなければなりません。

死に向かうときの身体の変化

次の表は、死へ向かう身体の変化をまとめたものです。

◆死が近づいてきたときの様子
・ウトウトと寝ていることが多くなるが、呼ぶと目を開けて反応する
・食事の量が減り、ほおや目のまわりなどの“やせ”が目立つようになる
・食べ物や水分が飲み込みにくくなり、むせることがある
・つじづまが合わないことをしゃべったり、興奮したりすることがある
・尿の量が少なくなり、排尿・排便で失敗することがある
・口が乾燥して言葉が出にくくなり、痰が切れにくくなる
・手足が冷たくなってくる
◆臨終の様子
・ほとんと眠っているようになってくる
・そのうち、呼んでもさすっても反応がなく、ほとんど動かなくなる
・大きく呼吸をしたあとに、10〜30秒ほど止まって、また呼吸をする波のような息の仕方になる
・肩や下顎(したあご)を上下させて浅い呼吸をするようになる
・喉の奥で、ゼロゼロ、ヒューヒューという音を出して呼吸する
・呼吸が止まり、胸や顎の動きがなくなる
・心臓が止まり、脈が取れなくなる

こうした過程を前もって知っておくことは、家族の死を受け入れる準備にもなります。そのときにできるだけ落ち着いてゆっくりとお別れができるように、心の準備をしておくことが大切です。

ここまでは在宅でみるがんの終末期の介護についてお話ししましたが、もちろん、家で過ごすことが最善とは限りません。一緒にいる喜びより不安や疲労が上回る場合などは、入院したほうがいいこともあります。

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「弱っていく姿を家族に見せたくない」と患者さんが思う場合、「死に至る過程を見たくない」という家族がいる場合もまた、入院を考える1つの要素かもしれません。

いずれにしても、大切な人が、自分が望むような形で最期を過ごせたら、家族もきっとやりきった感があると思います。残された時間をどう関わってどう過ごすか、後悔のない選択をしてほしいと願っています。

(構成:ライター・松岡かすみ)

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KuKuRuのエントランス
KuKuRuのエントランスで。看護師と話し合う中村医師(写真:著者提供)
中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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