30代で難治がんの教師「子どもたちに伝えたい事」 先延ばしにした「いつか」は来ないかもしれない

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「大切な友人は、いつまでも元気にともに人生を歩んでくれると思い込んでいたのに、突然亡くなってしまった。彼は私にいろいろと親切にしてくれて、本当にいい奴だった。だけど私はついつい彼に不義理をしてきてしまった……」

このように後悔しても、その友人はもう戻ってきてくれません。

そんなふうにある意味日々を粗末にしてしまう生き方をしている私たちは、Mさんの「『いつか』を『今』にする」という言葉にハッとします。

Mさんはなぜ「『いつか』を『今』にする」という生き方を選ぶようになったのか。それは、がんになると、まったく違う時間軸で生きるようになるからです。

がんになると死を強く意識する

がんになると、死を強く意識し、1年後に自分が生きていることについて、確証が持てなくなります。「いつまで自分が生きられるのだろうか」という不安や恐れは苦痛ですが、その裏返しとして、「今日1日を生きていることは当たり前のことではないんだ。だから、今日1日を大切に生きよう」という考えが出てきます。

「いつか」はやってくるかどうかわからない。ですから、「今」やろうという考えは、Mさんの状況を思えば当然のことです。

死を意識する人は、これは今やっておかないと一生かなわないことかもしれない、やらないまま死んでしまうことになるかも、と心底感じ、先延ばしにしようとは思えないのです。

私はあえて、「いつ自分が死ぬかわからない」ということを意識するようにしています。これは一見ネガティブな考え方に感じられるかもしれませんが、こう考えることにより、1日がいとおしく思えるようになり、ポジティブに生きることにつながるのです。

もし1年後に、自分が進行性の病気になっているとしたら(可能性はそれほど高くないかもしれませんが、なっていないという保証はありません)、1年後の自分が今の自分を振り返った際には、「ああ……もっと、あれをしておけばよかった、これもしておけばよかった」と後悔することでしょう。

そう考えると、今この時間も大切に思え、すぐに行動に移ろうという気になるかもしれません。

また、「もしかしたらあのとき、自分は死んでいたかもしれない」という経験も役に立つことがあります。私は学生時代に自分の自動車の無謀運転で、一歩間違えれば死んでしまっていたというようなことが実際にありました。

思い出すだけでも身の毛がよだつような記憶なのですが、でも当時のことが頭に浮かんだときは、しばしその記憶と向き合い、「私もあそこで死んでいたのかもしれないな」などと考えるようにしています。

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そうすると、今ここに自分が存在できていることにこころから感謝の念が湧き、今日自分が犯した失敗などささいなことに思えます。

現代では、ともすれば「死」は不吉なものと考えられがちで、おおっぴらには語りにくい場面もあるかもしれません。

しかし、気持ちのどこかに死を意識して、「今日1日をこのように過ごせることは当たり前ではない」と考えておくことは、決して悪いことではないと思います。「今、ここにあるもの」を大切に生きることにつながるでしょう。

清水 研 精神科医、医学博士

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しみず けん / Ken Shimizu

がん研有明病院腫瘍精神科部長、精神科医、医学博士

1971年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、2003年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は4000人を超える。2020年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に「もしも一年後、この世にいないとしたら(文響社)」、「がんで不安なあなたに読んでほしい(ビジネス社)」など。

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