30代で難治がんの教師「子どもたちに伝えたい事」 先延ばしにした「いつか」は来ないかもしれない

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がんを経験し、後悔しないよう「いつか」を「今」にする生き方に変えた女性のお話です(写真:maru/PIXTA)
20代、30代のときに突然がん告知を受け、余命と向き合うことになったら──。20年以上がん患者を専門にみてきた精神科医の清水研さんは、若者たちが病とともに懸命に生きる姿から多くのことを学んだといいます。
今も懸命に生きる6名の若者との対話をつづった新刊『絶望をどう生きるか』から、Mさんという女性の体験を抜粋して紹介、人間に備わった「レジリエンス(復元力)」について考えます。
※本書では本名で登場していますが、ここでは匿名(Mさん)として紹介します。

前々回:5年生存率33%でも…「今を見て大切に生きたい」
前回:「10万人に1人の希少がん」と闘う女性の生きる力

「いつか」を「今」にする生き方

Mさん(34歳で発症)は10万人に1人というメラノーマ(悪性黒色腫)を頭皮に発症。頭部拡大切除手術を受けます。その1年半後に再発。全身に転移が見られましたが、分子標的薬による治療を受けながら、現在も教員を続けています。

がんを体験してから、Mさんは何ごともすべて、先延ばしをしないようになりました。どんなことも後悔しないよう、今やろう、と決めたのです。

「『いつか』を『今』にする生き方」に変えたのです。

もちろん不安はいつもそばにあります。でも、起こるかもしれないし起こらないかもしれないことを考えて縮こまって生きているよりも、今を見て、大切に生きたいと思っています。

自分のことをかわいそうだと思うのは簡単だけれど、それでは何も変わらない。どうやったらたのしくなるのか。「いつか」はやってくるかもしれなし、やってこないかもしれない。「今」をどう選択するのか。

運命を決めるのは「病気」ではなく、「自分自身」だからです。

また、これまでを振り返ることも多くなりました。山あり谷ありのジェットコースターのような人生だったけれど、ここまでがむしゃらに頑張ってきた自分の人生を好きだな、とも思えるようになったのです。

そして、「私の人生は私しか歩めず、私の人生の1位も最下位も私なんだ」と思うと、限りある時間をどう生きるかだけだと思うようになりました。「今」この瞬間が人生を作っている、そう感じながら、日々歩んでいます。

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