「10万人に1人の希少がん」と闘う女性の生きる力 生きてさえいれば、よいことがたくさんある

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ですが、幸か不幸か1枚も当たりませんでした。ただ、はずれたことで、Mさんはかえって5年生存率33%の側に行けるような気がしたのだそうです。

とにかくできる限りの治療をしよう、とMさんは決心します。

劇的に効いた新薬。未来はきっと明るい

ご主人と相談しながら取り組んだ最新の治療。なんと、2019年に承認されたばかりの薬が劇的に効いたのです。

2週間くらいで右脇にあった皮膚下の転移がうそのように小さくなったのを実感。最初は副作用による腸炎、網膜剝離もあり、かなりつらかったのですが、休薬しながら続けているうちに、2カ月後には肺転移が38ミリから22ミリになりました。そして、4ヵ月後には、左肺の腫瘍が消失していたのです。

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医学は日進月歩どころではなく、秒単位で進歩しているのだとMさんは体感しました。そして、「1分でも1秒でも長生きすれば打てる手も増え、きっと未来は明るい」と思えたのです。

そして6カ月経ち、なんと「完全寛解」と告げられたのです。その日のMさんのインスタグラムには、「生きてさえいれば、よいことがたくさんある」と書かれています。

さらに今は、頭皮の再建手術に臨んでいます。これからも人生が続くのであれば、鏡を見たときにがっかりしない自分にもう一度会いたいと思ったのです。

次回:30代で難治がんの教師「子どもたちに伝えたい事」

清水 研 精神科医、医学博士

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しみず けん / Ken Shimizu

がん研有明病院腫瘍精神科部長、精神科医、医学博士

1971年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、2003年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は4000人を超える。2020年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に「もしも一年後、この世にいないとしたら(文響社)」、「がんで不安なあなたに読んでほしい(ビジネス社)」など。

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