プーチンが示した「長期戦覚悟」の明らかなサイン いきなりの「兵員大幅増強」命令が意味すること
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8月25日、同国軍の兵員を大幅に増やすよう命じた。ロシア政府が肥大化した軍隊を長年にわたりスリム化しようとしてきたことを考えると、大きな方針転換だ。これはまた、ロシア側に甚大な被害をもたらしているウクライナとの戦争の長期化にプーチンが備えを講じていることを改めて示すものでもある。
大統領府によって押印され、ロシア政府のウェブサイトに掲載されたこの命令は、目標とする現役兵員の数をおよそ13万7000人増やし、来年の1月時点で115万人確保するものとしており、必要な予算を確保するよう政府に命じた。
プーチンがロシア軍全体の兵員数を変更する命令を出したのは、この5年間では今回が初めてだ。今回の命令についてロシア当局は一切説明しておらず、国営放送でもほとんど言及されていない。
推計最大8万人の死傷者が出ている
ウクライナの全土、あるいは大半を再びロシアのものにするという目標の実現には依然としてめどが立たず、ロシア軍が人員不足に苦しむ中で、プーチンは今回のような行動を起こした。アメリカとイギリスの軍当局の推計によれば、2月に侵攻を始めて以来、ロシア軍はこれまでに最大で8万人の死傷者を出している。
こうした損害や前線の膠着状態から一部のアナリストは、今回の命令を、戦闘開始から6カ月がたった今もプーチンには攻撃の手を緩めるつもりがないことを示すシグナルと位置づけている。
「間もなく戦争が終わると考えているのなら、このような行動は起こさないだろう」。ランド研究所のダラ・マシコット上級政策研究員は「今回のような行動を起こすのは、争いの長期化に向けて何らかの計画を立てているからだ」と指摘する。