プーチンが示した「長期戦覚悟」の明らかなサイン いきなりの「兵員大幅増強」命令が意味すること
ソビエト連邦時代にKGBで諜報員を務め、パンデミック期間の大半を、側近も含めほとんど誰とも会わないようして過ごしていたプーチン氏の行動を予測するのが難しいことは、ロシアを専門とするアナリストらのほとんどが認めるところだ。
なにしろ、予測に使える材料すら乏しい。ところが、25日に発せられた兵員増強を命じる大統領令は、プーチンが戦争継続の準備を進めていることを示している。もっとも、ロシア軍がプーチンの兵員増強目標を達成できるのかどうかは未知数だ。
前出のマシコット氏は「懸念すべき発表だが、目標を達成できる能力があるのかどうかは疑問だ」と話す。
プーチン氏の下でロシア当局は、徴兵に頼ったソ連時代の軍隊から、西側諸国のように職業軍人を中心とする軍隊へとロシア軍を変えようと試みてきた。国防省は契約軍人の採用に長年力を入れ、18〜27歳の男性に課せられる兵役期間を1年に短縮している。
40歳の年齢上限もすでに撤廃
ロシア政府はウクライナでの戦闘に参加している部隊は契約軍人と志願兵のみで成り立っていると主張。今回の戦争も「特別軍事作戦」と呼称し続けている。しかし、ロシアに占領されたウクライナの地域では男性が軍役に強制的に就かされているほか、ロシア国内で徴兵された兵士が前線に送られているという情報も浮上している。
アメリカのシンクタンク、海軍分析センターでロシア研究の責任者を務めるマイケル・コフマン氏は「私のみるところ、今回の命令は必ずしもより大規模な徴兵や動員の前触れとなるものではない」とツイートした。「そうした可能性もなくはないが、(現在ロシアが行っている)さまざまな兵士採用の取り組みを支援することが目的ではないか」
ウクライナ東部で国家として独立したと主張する地域には親ロシア派の武装勢力がいる。こうした勢力をロシア軍に組み込む計画かもしれないとコフマン氏は述べている。これら地域の「併合を(ロシアが)行った場合にはとくに」こうした計画が実行される可能性があるという。
ロシア当局は高額な報奨金やその他の手当を提示することで人々を軍に勧誘。ウクライナでの戦闘に参加させるために、シリアで兵士を雇い入れてもいる。さらに5月にプーチン氏は、40歳を上限とする志願兵の年齢制限を撤廃する法律にも署名している。
(執筆:Anton Troianovski記者、Ivan Nechepurenko記者)
(C)2022 The New York Times
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