左脳の機能失った脳科学者が教える、心軽くする技 「90秒ルール」で自分の感情回路を静観する

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彼女に、前に進まなければならないとは言わないでください。なぜなら、今、彼女は自分の<キャラ2>に圧倒されているからです。左脳の感じる<キャラ2>は彼女の悲しみに巻き込まれているのです。

例えば、居間でリラックスしているとき、彼女の手をやさしくとって、こう言うんです。

「ねえ、ゾンゾンの小さな足の肉球がどれだけ柔らかかったか覚えてる? すごく柔らかかっただろう? あれで頬をなでられるのが好きだったなあ。ゾンゾンがいてくれて本当によかった。家族みんなを楽しませてくれたよね。恋しいなあ、きみもだろ? ゾンゾンのどんなことを覚えてる? 面白かった思い出を1つ聞かせてよ」

彼女にいい思い出を反芻(はんすう)させてあげるのです。そうして、彼女の<キャラ3>、右脳の感情を呼び出すのです。あの美しい猫を飼っていたときの喜びを、今この瞬間に思い出させてあげるのです。

喜びと愛情を<キャラ3>に植えつける

竹内:猫の写真を飾ってもよいと?

Jill Bolte Taylor/1959年、アメリカ・ケンタッキー州生れ。神経解剖学者。インディアナ州立大学で博士号取得後、ハーバード医学校で脳と神経の研究に携わりマイセル賞を受賞。また、精神疾患に関する知識を広めるべく全米精神疾患同盟(NAMI)の理事を務めるなど活躍する中、37歳で脳卒中に倒れる。その後、8年を経て機能を回復させた。現在は、ハーバード大学脳組織リソースセンター(ハーバード・ブレインバンク)のナショナル・スポークスマンとして、重度の精神疾患の研究のために脳組織を提供することの重要性について、啓蒙活動を行っている

テイラー:もちろんです。あなたたちは、ゾンゾンのことをポジティブな形で思い出すべきなのです。

もちろん、ゾンゾンの不在を「悲しい、つらい」と思うときもあるでしょう。悲しみや嘆きの気持ちを一時的、ほんの90秒だけ持つことは悪いことではありません。この一時的な感情の持続時間を、私は「90秒ルール」と呼んでいます。

娘さんは「寂しくてたまらない」と、泣きながら言うかもしれない。そんなときは「うん、いままでと同じじゃないよね。家の中が違う気がするよね?」と確認し、痛みを共有し、家族の絆を深めてください。

そして、話をするんです。彼を飼いはじめたときのことや、爪を切ってあげたときに怖がったこと、トイレに閉じ込められたこともあったかもしれない。あのときはみなで笑いあったっけ、と。

彼のことをリアルに思い出して、今この瞬間によみがえらせる。悲しむことは悪いことではありません。喜びと愛情をあなたと家族の<キャラ3>に植えつければいいのです。

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