左脳の機能失った脳科学者が発見、凄い脳の使い方 4つのキャラを知れば、なりたい自分になれる

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脳卒中で左脳の機能を失ったものの、8年のリハビリの末に機能を回復させたジル・ボルト・テイラー氏。その経験からたどりついた理論について解説します(写真:Martin Boling Photography)
脳科学者のジル・ボルト・テイラー博士は、37歳のときに左脳の脳出血(脳卒中)で、それまでの認知機能、身体機能を失いました。その後、8年間のリハビリの末、すべての機能を取り戻しましたが、その実体験と神経解剖学の科学的見地から、「脳の仕組みを知れば、考え方・感じ方の嫌なクセは変えることができ、心穏やかな人生が手に入る」と指摘します。
いったい、どういうことなのか。テイラー氏の新著『WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方』の翻訳を務めたサイエンスライターの竹内薫氏が、テイラー氏に聞きました。前編は「脳の4つのキャラ」とそこから生まれる「世代間ギャップ」についてです。

脳を客観的に捉えれば、なりたい自分になれる

竹内薫(以下、竹内)脳卒中になったのは37歳のときだったそうですね。

ジル・ボルト・テイラー(以下、テイラー):ハーバード大学精神医学部で教鞭をとっていたときでした。研究生活に没頭して人生の最盛期を迎えていたころのことです。

4時間のあいだに、自分の脳の左半球が完全に停止し、細胞や神経回路がその機能をすべて失っていきました。その日の午後以降、歩くことも話すことも、読むことも書くことも、自分の人生を思い出すこともできなくなり、そのときの自分はまるで、おとなの女性の体をした乳児でした。

その後、8年をかけ、自分の脳の右半球に残っていたものを最大限に使って、左半球の回路を再構築し、完全に機能回復しました。

今回の『WHOLE BRAIN 心が軽くなる「脳」の動かし方』は、脳卒中を経験した人にかぎらず、人間関係や社会生活がいつも同じようなパターンでうまくいかないと感じている人や、さまざまな依存症から抜け出せずに葛藤している人などに向けて書きました。

自分や相手の脳の動きを客観的に捉える方法を知ることによって、相手に敬意を払い、なりたい自分になれるということを伝えたかったのです。

竹内それについて、もう少し詳しく教えてください。

テイラー:私は部位ごとの脳機能のオンとオフを体験したことで、自分の脳内に、特徴のある複数の人格があることに気づきました。

一般に言われている「右脳は感情、左脳は思考」という単純な右脳/左脳の考え方は十分ではなく、左右の脳それぞれに感情と思考を司る細胞群があり、考え方や感じ方の異なる4つの個性的な<人格(キャラ)>、もしくはアイデンティティーのようなものがあるんです。

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