左脳の機能失った脳科学者が教える、心軽くする技 「90秒ルール」で自分の感情回路を静観する

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竹内:さきほどおっしゃった「90秒ルール」とはどういうものなのでしょうか。

テイラー:90秒は、ある考えを思い浮かべた瞬間から、感情回路を刺激し、それに対して生理的な反応が起こり、それが収まるまでの時間です。

例えば、「怒り」は神経回路の引き金になるものだと考えられています。怒りを感じたときは、その神経回路が発動するのです。しかし、通常その怒りは90秒で収まります。

ただし、その同じ回路を何度も繰り返し刺激し続ければ、3時間も怒り続けることもできます。運が悪ければ、10年たっても、まだそのループを繰り返して怒っているということもあるでしょう。

そのルールを知っていれば、自分の感情を冷静に観察できるようになり、自分が走らせがちな感情回路を特定できるようになり、そして自分自身の感情回路を静観できるようになるのです。

90秒ルールが当てはまるのは、怒りだけではありません。悲しいかな、おなかを抱えて笑うのを90秒以上続けるのは難しい。ポジティブな感情であれネガティブな感情であれ、かなりの確率で90秒に収まってしまうのです。

親しい人との永遠の別れにどう向き合う?

竹内:『WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方』のなかに、とても悲しいけれど印象的な場面がありました。

竹内 薫(たけうち・かおる)/理学博士、サイエンスライター、サイエンス書翻訳家。1960年生まれ。東京大学教養学部、理学部卒業。カナダ、マギル大学大学院博士課程修了。主な翻訳書にJ. B. テイラー『奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき』(新潮社)、P. ナース『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ダイヤモンド社)などがある

亡くなった若いご友人とお母さまのことです。親しい人との永遠の別れについて、あなたの脳の<キャラたち>はどう反応したのでしょうか。

テイラー:友人は私の家で亡くなりました。彼女は28歳ごろに乳がんと診断され、8年間入退院や手術を繰り返し、最終的には、卵巣、子宮、乳房すべてを摘出しました。それでも懸命に生きた。

私たち友人のなかでも最も若く、みんなに可愛がられていた彼女は、亡くなったとき、まだ37歳でした。

闘病中、私たちはあらんかぎりの方法で彼女をサポートしました。彼女が亡くなる前夜、私たちは彼女に寄り添っていました。午前2時、彼女の息は荒くなり、胸が詰まって、死のガラガラという音がしはじめました。

その瞬間、私はこのできごとを、自分の人生で最もトラウマになる瞬間<キャラ2>か、最も美しい瞬間<キャラ4>のどちらかとして、一生忘れられなくなるだろうと思いました。そして「最も美しい瞬間」にするほうを選び、<キャラ4>になりきって「あなたも私たちも大丈夫」と彼女の耳元でささやきました。

一瞬にして、彼女の息の深さが変わり、部屋の緊張が解けました。

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