永守重信氏の「後継者難」に映る日本電産の泣き所 「優秀な外様」とは理想の親分子分関係を築けない

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それに比べて、「優秀な外様」との同居期間は、親分子分の関係になるには、あまりにも短すぎた。永守氏は長時間を浪費するゴルフを好まないこともあり、関氏は日本電産に入るや否や、日産時代に勤しんでいたゴルフをきっぱりと止めた。同社の公式ホームページのインタビュー動画で趣味を聞かれると、「趣味は日本電産」と答えている。永守氏が求める親分子分の関係になろうと自ら務めていたようである。しかし、それは、CEOを譲られるほど期待がかけられていたからである。

ところが、関氏の担当だった車載事業が2四半期期連続の赤字となり、株価が下落すると、「実績がすべて」の永守氏から「経営力が低い」と叱責されるようになった。関氏には、円安効果はあったとはいえ、2022年4~6月期でも最高益を達成し、社内の風通しをよくしたという自負もある。

それだけに、忸怩たる思いが込み上げてきたものと思われる。ほかの「優秀な外様」と同様、もう、この人(永守氏)とは一緒にやっていけないという思いを強め、退社を決意させたのだろう。永守氏から見れば、本当の親分子分の関係になりきれていない、と判断したと考えられる。

日本電産に突き付けられた悩ましき内なる課題

構築に時間がかかる親分子分の関係が、わずか2年でできるはずがない、と永守氏もわかっていたはずだ。しかし、2030年度に連結売上高10兆円を達成するため、高成長が見込まれるEV(電気自動車)市場の牽引役となる車載事業を強化するには、関氏のリーダーシップが必要不可欠である。そう期待していただけに、「実績を出せない」関氏を許せなかったのだろう。

もし、今、永守氏がもっと若ければ、「時間がない」という焦りを、それほど感じなかったかもしれない。その焦りが、「厳しいが、どこか憎めない愛すべき人」のバランスを崩し、厳しさが前面に出すぎてしまった。それが、他社の企業文化で生きてきた人には通じず、子分にはなれなかった。

関氏の世代でさえ、永守氏の子分になれないとすると、上の人に対して「上から目線だ」と指摘する世代とは、どのようにして親分子分の関係を作っていくのだろうか。その点が、「ハードワークを基本とする企業文化」を復活させるうえで、日本電産に突きつけられた悩ましき内なる課題である。人心掌握の達人を自負する永守氏には、是非とも新世代に合致したHRM(人的資源管理)を構築してほしいものだ。

関氏の退社で、今後は永守会長―小部社長による暫定政権のもと経営されることになりそうだ。この結果、永守氏の人生計画も軌道修正せざるをえなくなるのではないか。

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