大人と子どもでは目の高さが違う。手の届く範囲が違う。大人が調理をするために作られたキッチンは子どもの身体では高すぎて、ステップスツールなどがなければ水を出すことすら困難だ。日本の家庭のキッチンの高さと、アメリカの家庭のキッチンの高さも異なる。身長が高い人が多いアメリカのほうが、日本よりも高くなっている。
身長差による使いやすさ、使いにくさはメタバースの中でも起きうる問題だ。実際にとある建築会社がメタバース内に作った建物に訪れたが、見た目は綺麗なものの圧迫感があるし同行した友人たちと話しにくいという印象を受けた。
世界中のユーザーにとって快適な環境とは
国産メタバースのclusterは基準となるアバターがある。そのアバターの身長はだいたい160cmくらいだ。日本人の平均身長と大きくかけ離れてはいないため、cluster内に建物を設置するなら日本人向けのリアルな建築物と同じ感覚で設計しても大丈夫。しかし、アメリカの企業が開発し、VRメタバースとしては一廉の存在となっているVRChatの場合は話が変わる。初期段階から選べるアバターからして子どもサイズから海外の大人サイズまで揃っており平均身長というのが見極めにくく、グローバルユーザーにとって快適な環境を作るのが難しい。
日本人のVRChatユーザーに使ってもらうという目的であれば、ある程度は基準化が可能だ。というのも120cm前後の、身長が低いアバターを好むユーザーが多いためだ。そのためリアルなスケール感の建築物なり乗り物だと周囲が見渡しにくいし、機能的な部分も使いにくい。
問題となるのはアバターの身長に合わせた建物のスケール感だけではない。日産自動車のバーチャルショールームの設計・モデリングや、兵庫県養父市の明延鉱山の坑道跡をメタバースで再現した株式会社タナベ代表取締役のVR蕎麦屋タナベさんによれば、リアリティを追求するとメタバースのなかでは使いにくくなるケースもあるとのことだ。
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