ザッカーバーグでも話題「メタバース建築」の課題 日本人は身長120センチ前後のアバターを好む

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例えばメタバースの中にVRヘッドセットを用いて入り込むと、手前に引くドアを開けて移動するときにスムースにいかないことがある。現実世界でドアを開けるときは腕だけではなく自然と身体が横に動いてスッと入ることができるが、視界の狭いVRヘッドセットではどれくらいドアが開いたかを把握しにくいし、ドアが自分に向かって飛んできたように見えるので強い圧迫感を覚える。

「ドアを開くといったギミックの部分はゲーム的というか、操作して気持ち良いと感じるようにディフォルメしたほうがいいと考えています」(VR蕎麦屋タナベさん)

VRChat内で開催されたイベントで乗ることができたハローキティ関空特急はるか(281系)。身長175cm相当の左の男性アバターだと乗車口などで頭がつかえる(実際にはすり抜ける)が、身長の低いアバターでも流れる車窓が見やすい縮尺で作られていた(筆者撮影)

リアルとは違うことを知るのが重要

また既存のメタバースは、同席している他のアバターの声が聞き取りやすいような音響設計がされている。10人くらいが輪になって会話をしていても全員の声が聴き取りやすい反面、少し離れた位置にいるアバターの喋り声も聴こえてくる。そのため、狭い場所では雑談がしにくいというウィークポイントがある。

VRChatにて、ディスコとして使えるライブスペースを作った3DワールドクリエイターのMazzn1987さんによれば、会話をしやすい環境とするには広いスペースが必要とのことだ。広い空間のなかにぽつん、ぽつんと会話の輪がある状態は一見すると閑散とした印象を受けるかもしれないが、その場を楽しんでいるアバターにとっては話しやすいと感じる空間になる。

「私がワールドを制作するときはBGMがバランス良く聞こえる場所、BGMの高音を控えめにして会話しやすくなる場所など、空間音響を意識して設計します」(Mazzn1987さん)

メタバースにおける建築は、現実の物理現象にとらわれずに済むゆえに自由な設計ができる、と記したが、メタバース内における状況を加味したうえでドアの動き方や音の伝わり方なども追求することで、居心地良い仮想空間を作り上げることができる。作品展示だけが目的ではなく、数多くのユーザーにリピーターになってもらうという目的があるならば、仮想空間内でのコミュニケーションのしやすさを理解する必要がある、というわけだ。

武者 良太 フリーライター

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むしゃ りょうた / Ryota Musha

1971年生まれのガジェットライター。90年代に出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。スマートフォン、モビリティ、AI、ITビジネスからフードテックなど、ハードウェアレビューから、ガジェット・テクノロジー市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。

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