「パンダの心臓疾患は珍しい」神戸の旦旦を襲う病 2022年5月に中国が専門家を派遣、今の様子は?
タンタンの公開は2021年11月22日から休止。同年12月14日から再開した。観覧再開にあたっては、タンタンにかかる負担を減らせるようにした。公開は、防音ガラスで観覧通路との間を完全に遮られる屋内パンダ舎のみ。さらに、酸素供給装置がある寝室側の扉を開けっぱなしにして、公開室の酸素濃度を高めた。
タンタンが寝室に入ったら、観覧できない場合もある。そこで観覧通路に設置しているテレビ画面で、観客が寝室の様子を見られるようにした。だが、タンタンは2022年3月14日から再び公開休止となり、現在まで続いている。
パンダは個体数が少なく比較しづらい
島村准教授は「今のところ病名も含め、はっきりしていません。何かが悪いとはわかっているのですが、何が悪いのかわかりません。心臓が悪くて心拍数が早いのか、体の調子が悪くて心拍数が早いのか。
人間なら目的を理解したうえで検査に協力してもらえますが、タンタンにはそういうわけにはいきません。ましてや、検査のために麻酔をかけるわけにもいかず、できる検査は限られます。その中でわかることを突き詰めるのは、難しい状況になっています」と話す。
検査の制限に加え、島村准教授が指摘するのは、比較対象の少なさだ。「人間なら世界に何十億人といて、その中でデータを比較できます。でもパンダは個体数が少ない。検査で出てきた数値を見ても、ほかのパンダがどうなのかがわからないので、タンタンに固有の症状なのか判断しづらいです。過去のデータが足りないこともあります」。
成さんと王さんも「パンダの心臓疾患は珍しい。タンタンと似た病状のパンダは1頭だけいました」と指摘する。パンダに多い病気を尋ねると「消化器系の病気が比較的多い」とのこと。タンタンの兄のダーディー(大地)は、1992年9月に生まれ2020年8月に中国で息を引き取った。成さんと王さんによると、ダーディーの死因は老衰だったそうだ。
現在、タンタンの健康診断では、聴診、視診、エコー検査、血圧測定、心電図検査、レントゲン検査を実施している。猛獣であるパンダに対し、麻酔や鎮静処置を加えずに、これほどの検査ができるのは、王子動物園の飼育員とタンタンの日頃のハズバンダリートレーニング(人間が検査・治療しやすい姿勢を動物が自主的にとれるようにする訓練)の成果だ。
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