スマホでサイトを閲覧・検索したり、写真を送ったり、SNSに投稿したり、といった個人情報。その膨大なデータが利用され、新たな富を生み出す源泉となるデジタル資本主義のあり方について、今議論が高まり、様々な波紋を広げている。ハーバード大学ビジネススクール名誉教授のショシャナ・ズボフ氏はそれを「監視資本主義」と名付け、デジタル革命が生み出したさまざまな問題に警鐘を鳴らしている。
昨年放送のNHK「欲望の資本主義 特別編『生き残るための倫理』が問われる時」で話題となったズボフ氏のインタビューを、未公開部分も多数収録した『脱成長と欲望の資本主義』から、監視資本主義の本質と実態について抜粋してお届けする。
「監視資本主義」の本質
──あなたがお考えの「監視資本主義」とは、どのような資本主義なのでしょうか。
ズボフ:「監視資本主義」という用語は、「監視」と「資本主義」という珍しい言葉の組み合わせで目を引くことを意図した大げさな表現だと批判されることがありますが、私は意図して大げさに表現しているわけではありません。
「監視資本主義」とは、デジタル世紀特有の新たな経済的なロジックに関係しています。資本主義を形成するさまざまな要素とデジタル経済の分野を形成する要素を組み合わせた経済論理です。たとえば、経済成長や利潤の追求、私有財産、市場取引を重視するといった、資本主義に関するこれまでの経済論理の要素も当然含まれます。
しかし、これらの要素は今、新たな状況に置かれています。新しい状況下では、監視の技術や社会的関係なしに、利益追求や成長といった要素をうまく達成することはできません。これが、私が、デジタルネットワークが創り出した新しい状況下の資本主義を「監視資本主義」と名付けた理由です。
トピックボードAD
有料会員限定記事
政治・経済の人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら