ズボフ:アマゾンの顔認証システムは、センサーやカメラが設置された、オンライン/オフラインでの世界を含む膨大な情報システムのほんの一例です。私たちは監視資本主義企業が、私たちのどんな情報を収集しているのかを知りません。情報を提供することに同意していませんし、私たちの未来の行動を予測するために、それらの情報を利用する許可も与えていません。
しかも、監視資本主義企業の情報収集システムは、すべて監視のために設計されています。私たちに気づかれないように設計されているのです。許可を求められたことがないので、私たちには戦う権利もありません。撤回する権利も、争う権利もありません。
私たちがオンラインで行っていることのすべてに加えて、防犯カメラが“監視”している家や車の中、路上、街中、学校、診療室などさまざまな場面のコミュニケーションや、ダウンロードしたアプリ、スマート製品、パーソナライズされたサービスなど、すべてが監視を行うためのサプライチェーン・インターフェースなのです。
私たちの個人的な生活からひそかに抜き取られた情報は、監視資本主義企業のコンピューティング施設に送信され、行動データに加工されて、私たちの未来の行動を予測するために使われます。
そして、それらが新たな市場で販売されています。石油や小麦、豚肉、魚などを専門に先物取引する市場があるように、この市場では“人間先物”とでも呼ぶべき人々の未来の行動の予測を専門に取引しています。
繰り返しになりますが、私たちの常識とはかけ離れたこの情報収集システムの構築は、すべて秘密裡に進められてきました。私たちは何が起こっているのかを把握していません。前代未聞のことなので、想像すらできませんでした。監視資本主義は私たちがまったく想像もできなかったことを行う経済の一形態なのです。
予想もできなかったこと
ズボフ:重要なことが2つあります。まず、私たちはこの種の経済を予期することができなかったことです。
この経済においては、私的な所有物であると想定されていた人々の個人的な経験に関する情報が無料の原材料として、一方的かつひそかに抜き出されています。
考えてみるととても不思議なことですが、誰もこんなことを予期していませんでしたし、実際に起こるとも思っていませんでした。
2つ目は、私たちはこの経済ロジックがこれ程の収益を生むとは思ってもいなかったことです。今、お話ししている監視資本主義企業は、時価総額の世界トップ6に入る企業です。
収益化の仕組みは、あらゆる社会領域における人間の行動の予測可能性を高めることに依拠しており、それが、社会にどのような影響を与えることになるのか、私たちは想像もしていませんでした。
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