あなたの情報を抜き取る「監視資本主義」の衝撃 個人のデータを「原材料」にして膨張する経済

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ズボフ:具体例を挙げます。2018年、監視資本主義企業の代表格であるフェイスブックの内部資料がリークされました。監視資本主義について調査する際には、密告者や内部の情報提供者からリークされた文書などが貴重な資料となることがよくあります。

リークされた文書には、フェイスブックの中心にある「AIバックボーン」と呼ばれるコンピューティング施設について記述されていました。その文書から、「AIバックボーン」ではAIが行動にまつわる何兆ものデータポイントを日々取り込んで計算し、毎秒600万回もの行動予測が行われていることが明らかになりました。人間の想像を絶する規模です。

先ほど指摘したとおり、人間の行動予測データは市場で売買されています。当然、他社との競合があります。競争に勝つためには、より正確な行動予測データが求められます。人間の行動をうまく予測するには大量のデータが必要です。そのため、監視資本主義企業は人々のさまざまな生活の場面でより多くのデータを収集しようと躍起になります。

これが、オンラインの世界で起こっていることです。人々がネット上でサイトを閲覧したり検索したり、フェイスブックで祖父母とやり取りしたり、生まれたばかりの赤ちゃんの写真を家族に送信したりする間にも、データが抜き取られているのです。

「モバイル革命」後、私たちは携帯型のコンピューターにさまざまなアプリケーションをダウンロードし持ち歩けるようになりました。それに伴い、私たちは世界中のどこにいても端末機に搭載されたジャイロスコープやマイク、カメラなどを介して、情報を絶えず抜き取られるようになったのです。

アプリをダウンロードすると

ズボフ:つい先日、あるデータ科学者に驚くべき事実を教えてもらいました。巨大テック企業で働いているデータ科学者です。それは、すべてのアプリは、その機能が何であれ、ダウンロードした端末からそこに保存されている最大量のデータを抽出するように設計されているという事実でした。

つまり、アプリが端末機に搭載されていれば、アプリを使うことで提供されるデータ以外にも、アプリの設計企業は、端末機に搭載されているマイクやカメラなどを介して端末機内のあらゆるデータにアクセスできるということです。

さらに、端末機内に保存されている連絡先のデータから、その連絡先にアクセスして、そこから得られる情報を検索していることもあります。これが、私たちが暮らしている今日の世界の実態です。

丸山 俊一 NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー/立教大学特任教授/東京藝術大学客員教授

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まるやま しゅんいち / Shunichi Maruyama

1962年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズのほか、「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」などをプロデュース。過去に「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題のニッポンの教養」「ソクラテスの人事」「仕事ハッケン伝」「ニッポン戦後サブカルチャー史」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」ほか数多くの異色教養エンターテインメント、ドキュメントを企画開発。著書に『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『働く悩みは「経済学」で答えが見つかる』『結論は出さなくていい』など。

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