ズボフ:「監視資本主義」は、資本がユーザーを一方的かつひそかに監視できる状況でなければ成功しない経済的なロジックです。この事実が、一連の経済的要求を決定づけます。そして、経済学者や法律家、ユーザーなど誰もが予期もしなかった影響を、人々や社会、そして民主主義に与えています。
監視資本主義の仕組みについて手短かに説明します。監視資本主義はまず、ネットワーク上のあらゆるサービスのユーザーに、サービスの対価として生活の情報、つまり、人々の個人的な経験に関する情報や知識を請求し収集します。
現代では、とくに民主主義社会では、個人的な情報は保護されるべきプライベートなものと考えられていますが、監視資本主義では個人的な生活の情報を、サービスを利用する代償として無料で要求し、“原材料”(行動データや行動データなどをもとにして加工される行動予測などのもとになる、ユーザー情報のことを意味する)として収集するのです。しかも、それらの情報はユーザーには無断で秘密裡に収集されています。
そして、無料で得た原材料から行動データを抽出します。行動データとは、人々の生活の情報から得られるデータのことで、人々の行動パターンを予測するための手がかりとなります。監視資本主義企業は、ユーザーから手に入れた膨大な量の行動データを自分たちの私有財産だと主張しています。
「恐れ」が商品になる「人間先物」市場
ズボフ:ここには一連の流れがあります。たとえば、アマゾンの顔認証システムに関するプレスリリースには、次のように書かれていました。「朗報です。アマゾンの顔認証システムでは、これまで喜び、悲しみ、怒り、嫌悪、驚きを識別することができました。そして今回、新たな感情を検知できるようになりました。新たな感情とは、『恐れ』です」。
しかし、私はアマゾンを利用するときに、自分の顔や表情の情報の提供に同意したことはありません。「恐れ」を認識させることにもいっさい同意していません。
監視資本主義にとって、顧客の表情は貴重な“原材料”です。多くの筋肉から作られる微かな表情は、感情を読み取るための最適な手がかりとなります。アマゾンは、ユーザーの感情から未来の行動を予測します。そして、ユーザーはアマゾンの顔認証システムがユーザーの表情を読み取っていることを知りません。
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