香港、少子高齢化と海外移民で「人口減少」が加速 コロナ禍の影響で出生児数が2年で3割減少

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香港の出生率はアジア最低の水準にあり、住宅事情や養育費用の高さがその一因になっている(写真はイメージ)

香港の人口減少が加速している。香港政府の統計局が8月11日に発表した人口統計の速報値によれば、2022年6月末時点の香港の人口は729万人と、1年前の741万人から12万人減少。前年比の減少率は1.6%と、1年前(1.2%)より0.4ポイント拡大した。

香港政府の説明によれば、人口減少の要因は2つある。1つ目は、社会の少子高齢化で年間の死亡者数が出生児数を上回っているための自然減少。2つ目は、香港市民の海外への転居に伴う減少である。

具体的には、2021年7月1日から2022年6月30日までの1年間の死亡者数が6万1600人だったのに対し、出生児数は3万5100人にとどまり、2万6500人の自然減少が生じた。また、同じ期間に11万3000人の香港市民が海外に流出。その数は前年同期比27%増加した。

移民が理由の年金解約が2桁増

香港の出生率は長年にわたって下がり続けており、アジアの国・地域のなかで最低水準にある。年間の出生児数は2016年7月~2017年6月は5万9500人だったが、2019年7月~2020年6月は4万9500万人と3年で17%減少。今回発表された出生児数は、そこから2年で29%も減少した。

出生児数の大幅減少について、香港政府の報道官は2020年に始まった新型コロナウイルスの流行の影響が大きいとの見方を示した。また、香港で子どもを育てるための(学費や家賃などの)養育費用の高さも、出生率を押し下げる一因になっているという。

一方、香港市民の海外転居の増加に関しては、報道官は「転居者数には仕事のための転勤や学生の留学、恒久的な移民などが含まれている。そのうち移民が目的の転居者について、香港政府は具体的な人数を把握していない」と言葉を濁した。

本記事は「財新」の提供記事です

だが、香港の公的年金制度を管轄する香港積金局のデータによれば、恒久的な移民を理由にした強制退職年金基金(訳注:香港のすべての企業とその従業員に加入が義務づけられている年金制度)の解約申請が2021年は3万3700件に上り、2020年の3万200件から11.6%増加。移民のために香港を離れる市民が増えている実態を裏付けている。

(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は8月12日

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