「中国本土に入境する際の強制隔離は7日間に短縮されたけれど、帰省したい人が多くて、隔離用ホテルの予約がまったく取れない」。そう嘆くのは、広東省広州市出身で香港で働いている陸娜さんだ。新型コロナウイルスの流行が始まって以来、彼女は一度も実家に帰っていない。勤め先は休暇申請を認めてくれたが、帰省の実現はまだ容易ではなさそうだ。
香港から中国本土への入境時には、指定されたホテルで14日間、さらに自宅で7日間の隔離が先日まで義務付けられていた。それが6月末からホテルで7日間、自宅で3日間に緩和され、香港で暮らす中国本土出身者にとっては帰省にかかる時間と費用が大きく軽減された。それを機に、陸さんは久しぶりに広州の両親に会いたいと期待を膨らませていた。
ところが、そこで思わぬ壁にぶつかった。香港から隣接する深圳に(鉄道やバスを利用して)陸路で入る場合、深圳市政府が指定する隔離用ホテルを事前に予約しなければならない。その予約が極めて困難なのだ。
「深圳の隔離用ホテルの予約を何度も試みたが、午前10時に予約が始まると1秒後には満室になってしまう」。香港政府の医務衛生局の局長を務める盧寵茂氏は個人のブログに経験談を記し、香港市民の話題を集めた。
一時は予約代行手数料20万円超も
隔離用ホテルの予約は、2021年初めに開設された専用サイトで行う決まりになっている。手数料なしで隔離期間(現在は7日間)の予約ができるが、部屋数には限りがある。受け付けは先着順で、自分名義の予約を他者に譲渡することはできない。深圳の入境窓口で有効な予約確認書を提示できない旅行者は、香港に送り返される。
香港が2021年末から新型コロナ流行の第5波に突入すると、深圳の隔離用ホテルの部屋数は1日当たり約800室に減らされ、極端な供給不足に陥った。そんななか跋扈し始めたのが、高額な手数料で隔離用ホテルの予約代行を請け負う闇のブローカーたちだ。彼らへの手数料は、一時は1万元(約20万円)を超えるほどに跳ね上がった。
その後、第5波が落ち着くとともに部屋数は段階的に1200室に増やされ、7月8日からは2000室になる予定だ。それでもブローカーの暗躍は続いている。財新記者が複数のブローカーに問い合わせると、7月初旬時点の予約代行手数料の言い値は1600元(約3万2000円)から3000元(約6万円)だった。
ブローカーはいったいどうやって予約枠を確保しているのか、その手口は謎に包まれている。財新記者がそれとなく聞き出そうとしても、「技術チームが担当している」と答えただけで詳細は明かさなかった。
(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は7月5日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら