2023年に実用化?「空飛ぶクルマ」の勝者はどこだ 未来の「エアモビリティ」業界地図は大混戦

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「空飛ぶクルマ」の市場規模推計は数多く出ているが、アメリカの調査会社「マーケッツアンドマーケッツ」によれば、2030年の都市航空交通システム(UAM)の市場規模は283億ドル(3.6兆円)になるという。

旅客機よりも近距離の都市移動に商機

本命となっている機体形式は、eVTOLという数人乗りの電池駆動式の垂直離着陸機だ。比較的狭い場所でも離着陸でき、全電動で部品点数が少ないためメンテナンス費用も軽い。ドローン技術の横展開で、パイロットが不要な自律飛行を実現しやすいといった利点が「空飛ぶクルマ」に適しているとされる。電気自動車やドローンの普及などで、関連するエレクトロニクス技術の進歩も後押しする。

このeVTOLを旅客機よりも近距離(数十キロ)の移動サービスとして提供するようになれば、都市部での渋滞問題の解消やCO2排出削減といった社会課題解決にも寄与する。ヘリコプターや自家用ジェットとは違い、電車や自動車、船などに取って替わる次世代の大衆向けモビリティサービスになりうる潜在力を秘めている点が、異業種の参入が活発であるゆえんだ。

「空飛ぶクルマ」産業が世界で活気づくきっかけとなったのは、アメリカのウーバーが2016年に発表した1本のレポートだったと言われる。

都市交通の将来像を展望したそのレポートで、ウーバーは空飛ぶクルマの機体価格や運行費等を詳細に推計し、他の移動手段とのコスト比較を行った。それによると、空飛ぶクルマは当初は自動車ライドシェアに比べて高くつくが、ゆくゆくは自動運転機能の搭載や機体の量産効果などにより、自家用車以下でのコストで利用できると算定し、世界に衝撃を与えた。

欧米では、アメリカのボーイングや欧州のエアバスといった旅客機メーカー両雄に加え、アメリカのテキストロン(ヘリコプター大手のベルや軽飛行機のセスナなどを傘下に持つ航空機メーカー)がeVTOL機の開発を表明している。

一方、中国勢では機体開発ベンチャーのイーハンが2019年にナスダック市場に上場した。民間自動車大手の吉利グループは、アメリカの機体開発ベンチャーのテラフージアを2017年に買収した。中国IT大手のテンセントは、ドイツの空飛ぶクルマの有望ベンチャー、リリウムに出資し大株主となっている。

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