2023年に実用化?「空飛ぶクルマ」の勝者はどこだ 未来の「エアモビリティ」業界地図は大混戦

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一方、国内では、2018年に経済産業省と国土交通省とが官民協議会を設立し、官民挙げて「空飛ぶクルマ」に取り組む。事業化へのロードマップを策定すると同時に、機体や運航の安全基準策定など制度設計も行っている。

スズキはスカイドライブと提携、トヨタも米社へ資本参加

日本の代表的なeVTOL機開発ベンチャーで知られるのが、2018年設立のスカイドライブである。トヨタ自動車出身の福澤知浩氏が設立。2020年には三菱航空機の元チーフエンジニアが同社に転身したことも話題を呼んだ。これまでに資金調達した額は累計51億円。2023年度の事業化を目指していたが、現在は2025年の大阪・関西万博での会場輸送サービスに照準を当て、新型機の開発を急ぐ。

日本の「空飛ぶクルマ」有力ベンチャー、スカイドライブの開発機体。2020年8月に公開有人飛行試験に成功した「SD-03」(©SkyDrive)

そのスカイドライブと今年3月に業務提携を発表したのがスズキである。スカイドライブは機体の製造・量産面でスズキのノウハウ活用を狙う。スズキは4輪、2輪、マリン事業に「空飛ぶクルマ」を加えた新しいモビリティ事業の具体化を期待する。

トヨタ自動車の動きも見られる。自前での機体開発はしないものの、世界で最も有望視される機体開発ベンチャーのジョビー・アビエーションに資本参加している。

同社は2009年にアメリカ・カリフォルニアで設立。2020年にはウーバーから空飛ぶクルマ事業を買収、2021年にはニューヨーク証券取引所にSPAC上場した。現在、5人乗りのeVTOL機を開発しており、2024年以降に空のタクシーサービス事業化を計画する。トヨタ自動車は現在13%を出資する大株主だ。2020年に出資した際のコメントで、「新たに“空”のモビリティ事業にチャレンジする」と、豊田章男社長は語っている。

ジョビー・アビエーションは、ANAホールディングスとも日本での事業展開に向けて提携している。ANAは「空飛ぶクルマ」運航事業への参入を検討しており、2025年の大阪・関西万博を起点に関西圏での運航サービス開始を目指す。ANAは「機体調達などの具体的な検討はこれから」としつつも、ジョビー・アビエーションの機体がその有力候補になると回答する。

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