日露天然ガスパイプラインはなぜ必要なのか 日本のエネルギー安保揺るがす中東の混乱

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リーマンショックのような危機が再来?(撮影:風間仁一郎)

サウジアラビアがはらむリスク

中東地域に目を転ずれば、「サウジアラビアは原油の生産コストが低いし、外貨準備も潤沢だから安泰だ」との声が多い。だが、生産コストが低いとは言え、特に11年の「アラブの春」以降、サウジアラビア政府は、カネをばらまくことで、国民の不満を抑えてきた。そのため、財政収支の均衡価格は1バレル=90ドル以上だと言われている。原油価格が1バレル=50ドルを割った状態が続けば、福祉予算を見直す事態に追い込まれ、失業などの社会問題が悪化する可能性が高い。

約2500人のサウジアラビア国民が既にISIL(いわゆる「イスラム国」)の活動に参加しており、ISILの主張がサウジアラビアの王族政治に対する批判を引き起こす恐れが高まっている。サウジアラビアの南の国境に接するイエメンの政情も極端に悪化しており、国境警備や軍事予算など予算需要が急拡大しているが、原油価格下落で「ない袖」は振れない。まさしく内憂外患である。

このような厳しい環境下で、今年1月下旬にサルマン新国王が就任したが、当分の間、シェアの確保という前国王が決めた石油政策が維持されるだろう。日本では今回の原油価格急落を「サウジアラビアの深謀遠慮である」とする見方が根強いが、海外の専門家の間では「逆オイルショックがサウジアラビアにとって『トラウマ』となっているため、意固地になってシェア確保に走っている」との見方が有力である。

今回の国王交代を契機に王位継承第2位の副皇太子に初めて初代国王の孫の世代が選ばれたが、孫の世代の王子は数百人存在しており、王位獲得に向けて権力闘争が開始されたとの観測がある。新国王は前国王の息子たちを有力州の知事等から解任する動きに出ているからだ。

サウジアラビアについては以前から政情不安説が流れていたが、『歴史序説』で有名なイブン・ハルドゥーンは「王室は3代ぐらいで没落する」と指摘している。新国王はいずれ「減産」の決定を下すとの希望的観測があるが、政権基盤が弱体化する中で苦渋の選択を行うことができるだろうか。

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