『Believe It 輝く準備はできてるか』(ジェイミー・カーン・リマ 著、森田理沙 訳、東洋経済新報社)の冒頭に書かれているこの部分だけを目にすれば、一般人とは異なる優秀な能力を持ち、チャンスにも恵まれた“選ばれし人”を思い浮かべるかもしれない。
いや、そうした見方は決して間違いではないだろう。これだけの偉業を成し遂げてきたことは、少なくとも絶対的な事実なのだから。
ただし見落とすべきでないのは、この文章が次のように続いていくことだ。
コンプレックスがもたらしたもの
不安や自己不信、体型不信、そして神様を疑う気持ちと格闘した、本当の私を。誰も私のアイデアを信じてくれないと感じた時には、数えきれないほど泣き寝入りして夜を過ごした、リアルな私を。まだダメだ、まだ痩せていない、まだ足りないという感情と闘う、リアルな私を。(「はじめに」より)>
つまり上述したような“成功”は、あくまでも“結果”でしかないということである。
自宅のリビングで起こした「イットコスメティックス」は結果的に、アメリカ最大級の高級化粧品ブランドに成長した。しかも同ブランドは、100年以上の伝統を持つロレアルに12億ドルで売却され、だから彼女は「初の女性CEO」となることができたのだった。それは事実だ。けれども、本書で克明に明かされている重要なことは、“そこに至るプロセス”なのだ。
同社を起こす前、著者のジェイミー・カーン・リマ氏はテレビのニュースキャスターやリポーターとして働いていた。テレビに顔を出していて、しかもそののち化粧品ブランドを立ち上げたとなれば、多くの人は“テレビ映え”のする人物をイメージするのではないだろうか? だがその点において、彼女は抜きん出た存在ではなかったようだ(少なくとも自身ではそう感じている)。
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