日本も無視できぬ「ウクライナ代理出産」深刻問題 新型コロナとロシアの侵攻で子を引き取れない

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代理母を避難させてウクライナ国外で出産させる場合、大きな壁が立ちはだかる。ウクライナでは代理出産は合法でも、禁止する国で出産し、子どもを引き渡せば違法として罪に問われる可能性があるからだ。

フランスとウクライナのケースをみてみよう。

フランスの民法では、他者のための生殖または妊娠の契約は無効とされている。刑法ではあっせん者は処罰の対象だ。このため、違法となるフランスを出国し、ウクライナに渡って代理出産するフランス人は少なくない。

そうした中、ウクライナ戦争によって新たな動きが出てきた。代理母を戦火のウクライナからフランスに逃れさせて、出産させるために「匿名出産」制度を利用する動きだ。

匿名出産はフランスに中世からある制度で、事情があって身元を明かしたくない妊婦のため、医療機関で名前を聞かずに出産の介助をする。書類には名前の代わりに「X」と書くため、「Xでの出産」と呼ばれている。

メディアも賛否両論

以前は母親の身元に関する情報は残されていないことが多かったが、出自を知る権利を求める子どもたちの運動に押される形で2002年、法改正され、母親は身元を明かすよう求められるようになった。

母親に関する情報は公的機関が秘密として預かり、子どもから求められた場合のみ、母親の承諾を得たうえで子どもに知らせるという。出自を知る権利は国連子どもの権利条約でうたわれている。

ウクライナからフランスに逃れてきた代理母に、匿名出産制度を使って出産してもらい、生まれた子どもを依頼者夫婦に引き渡すケースが複数あるという。

生命倫理政策研究会共同代表の橳島(ぬでしま)次郎さんによると、代理出産に反対する人権団体「子どものための法律家たち」は、匿名出産制度を使って子どもを引き渡すのは刑法の「出生した子どもの遺棄の教唆に当たる」として依頼人カップルを刑事告発した。

これに対しフランス司法省は検察に対し、ウクライナでの戦争の状況に鑑み、依頼者に対する告発をしないよう求めたという。

橳島さんは次のように語る。

「苦労して子どもをウクライナから連れ出した人の話を美談的に報じるメディアもあれば、『代理出産はエゴだという本質をウクライナ戦争が明るみに出した』と指摘するメディアもあります」

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