日本も無視できぬ「ウクライナ代理出産」深刻問題 新型コロナとロシアの侵攻で子を引き取れない
ウクライナ戦争によって、図らずも多くの代理母や子どもに大きな影響が出ている。その詳細はこれまで記してきた通りだ。しかし、代理母や匿名出産の制度はそもそも大きな問題をはらんでいる。
依頼者カップルに子どもが無事に引き渡されたとしても、子どもとその実母である代理母のつながりを将来どう保っていくのか、いかないのか。あるいは、子どもの出自を知る権利をどう守るのか、出産という命懸けの仕事を請け負う代理母のケアをどうするのか。課題は山積みだ。
代理出産によって生まれた子どもからすれば、「母親」が複数いることになる。それに伴って自分の出自について混乱することはないだろうか。代理出産の中には、依頼者以外の女性から提供された卵子を使って受精卵を作り、代理母に出産を依頼することもある。そのケースでは、遺伝上の母、出産した母、育ての母という3人の母親が存在することになるわけだ。
卵子提供と代理出産を手掛ける株式会社「メディブリッジ」(東京)の担当者は、次のように言う。
「夫婦の受精卵を使って代理出産した場合、父母と血がつながっており、子どもは代理母のことを『母親』とは思わないのではないでしょうか。成長した子どもが代理母に会いたいと願った場合、代理母と連絡が取れれば可能かもしれません。逆に、代理母から『子どもは大きくなっていますか』と聞かれることはありますが……」
「代理母」の尊厳をどう守るか
代理母の尊厳をどう守るかという問題もある。これに関連して、複数の国で代理母の調査をしてきた金沢大学融合学域助教の日比野由利さんは次のように指摘した。
「代理母が出産した事実を忘れることはありません。単に子宮を貸しているだけではなく、生みの親と胎児は分子レベルでつながっています。それは、新たなつながりや絆が生まれるということでもありますが、圧倒的な格差の存在や多額の報酬という名目の下で代理母の期待は抑圧され、黙殺されてきました。多大な犠牲を払う代理出産という営みに代理母が主体的に関わり、その存在が消されないようにすることは重要なことです」
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